記事内に広告が含まれています。

技術士試験 論文例「Ⅲコンポーネントの外製化」

この記事は約3分で読めます。

問題

令和3年 技術士二次試験 機械部門 選択3(機械設計)より

論文例

1.外製化を行う際の課題

 具体例として、1ステップ型射出延伸ブロー成形機(以下、ISBM)の新規開発を挙げる。ISBMは射出工程と延伸ブロー工程を連続的に行う容器用の成形機である。射出工程で容器の素材となるプリフォーム(以下、PFM)を成形し、延伸ブロー工程でPFMを容器形状に成形する。ISBMのコンポーネントのうち金型を外製化する。金型は加工方法や組み立て時の型合せ等、熟練技術を要するので専門技術をもつ外製先と協力開発を行う。

1.1 技術力向上の課題

 外製化することで自社にノウハウが蓄積しない。よって、外製化しても技術力の向上を図ることが課題である。外製先との開発設計情報を共有や現場ノウハウの伝承方策を検討しなければいけない。

1.2 保守に関する課題

 ISBMでは、射出工程と延伸ブロー工程及び搬送用の各工程でのそれぞれの金型が必要である。このため金型メンテナンスや金型交換等の保守に工数がかかる。

保守用治具の設計や金型交換が容易な金型を成形機本体の設計と協力して行うことが課題である。

1.3 PFMの温度制御に関する課題

 ISBMでは、射出工程で発生した熱を保有した高温のPFMを連続的に延伸ブローしている。このため、PFMの温度を延伸ブロー成形に適した温度になるまで時間がかかる。また、PFMの箇所により(図1)適当な温度が異なる。PFMを延伸ブローに最適な温度にすることが課題である。

(図1スペース)

2.最重要課題と解決策

 外製化を行う際の課題として、3つの課題を比較分析した結果「PFMの温度管理に関する課題」が最重要な課題である。以下に解決策を述べる。

2.1 温度調節ユニットの追加

 現状は、射出成形されたPFMをそのまま延伸ブロー成形しているため最適な温度になるまで待ち時間がある。エアー送風による温度調節ユニットを追加し待ち時間の短縮を図る。工夫として、使用したエアーは回収し延伸ブローに再利用する。

2.2 金型内温度の分割

 PFMの温度は箇所によって適切な温度が異なる。例えば、ロゴマークなどがある場所は温度を高くし金型形状を転写しやすくすると短時間のブローで成形完了するが、現状はブロー時間を長くすることで転写性を確保している。射出金型の温度を箇所毎に変更できるように水路設計を行う。(図2)水路Aにはチラー水を流し冷却し、Bには60度程度の温水を流すことでロゴ部分にあたるPFMの温度を冷却しすぎないようにする。

(図2スペース)

2.3 PFM肉厚の調整

 現状は成形流動性の観点からPFMの肉厚は均一になっている。PFM肉厚が厚い箇所は薄い箇所に比べ保有熱が大きく一定時間放置後の温度が高い。延伸ブローに適した温度分布になるようにPFMの肉厚を調整する。

3.新たに生じうるリスクとその対応策

3.1 環境変化等の影響による温度ばらつき

 解決策を実施しても環境温度等の変化によってPFM温度のばらつきが生じる。これにより不良品が生産されるリスクがある。対応として、品質工学を活用し機能性評価を開発プロセスに組み込む。環境変化を誤差因子、各解決策を制御因子に含めて評価を行いロバスト性の高い温度管理手法を組み合わせて選択する。

3.2 高コスト化

 いずれの解決策も機能追加のためコストアップとなる。対応としてモジュール化設計を行う。金型については、コア部分は共通モジュールとし形状部分のみを受注毎に設計する。各機能ユニットについては、成形機サイズと生産量に合わせた最小限のラインナップを設定し低コスト化を図る          以上

ダウンロード用PDF
スポンサーリンク
スポンサーリンク
技術士論文例
ものねこをフォローする
もののほん

コメント

技術士を目指す方のサポートをいたします。
筆者(ものねこ)は、最低限の正しい知識を本ブログで入手し、プロの論文添削を受けることが合格へ最短ルートになるように努力してまいります。

ものねこをフォローする