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機械設計技術者試験1級 論文例「開発工数の把握方法について」

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問題

機械設計技術者試験1級 H28 小論文より

新商品開発において開発段階で消費する工数をきちんと管理していないケースがよく見受けられる。開発部門の作業の把握管理のためにどのような工数把握方法分析方法を実践すべきか述べよ。

論文例

はじめに

設計・開発部門(以下設計部門)は他部門から様々な要求を受けることが普通だ。競争力のある商品(もちろん短期間で)、品質向上、コストダウン、営業部門の支援に至るまで、数え上げればキリがない。やることが多すぎて現状の人数では回らないというのが実情である。人員増の要望が通る可能性もほとんどないため、人数を増やさずに品質向上やコストダウン等を実現させなければならない。しかし、設計の仕事は複雑かつ属人的な業務も少なくないため、業務改善は容易なことではない。

工数把握の必要性

限られた人数で多くの設計テーマを推進するためには、各設計テーマに適切な設計者、人数、期間、工数などを割り当てる必要がある。そのベースとなるのが設計工数の見積りである。見積りの精度が高ければ、特定の設計者・時期に設計負荷が集中することを避けることができる。負荷の平準化は設計者の集中力維持(=ポカミス防止)や、必要な検証や評価試験を意図的に実施しない「不正」を防ぐという点で非常に重要である。

また、設計では想定外の不具合が発生したり、途中で要求事項が変わったりするなど、設計工数の見積りは簡単ではない。しかし、見積り→設計工数集計→検証を繰り返すうちに、見積りスキルは向上していく。逆に言えば、「設計工数の把握」を実施しない限り、見積りスキルは決して向上しない。品質を安定させるためには、「設計工数の見える化」が不可欠なのである

工数把握方法分析方法

設計部門の業務を「設計業務」「設計付帯業務」「設計外業務」に分類する。それぞれの設計テーマごとにNo.をつける。各テーマは設計管理者が工数の見積りを行った上でスタートする。

設計者は集計表に自分が手がけている設計テーマのNo.を記入し、それぞれの設計テーマで使った時間を一日ごとに記入する。15or30分を最小単位とする。

一つの設計テーマが完了したら、設計工数をすべて集計し、見積り工数と実績値の比較や、想定より工数を要した工程などを洗い出していく。必要に応じて設計プロセスの見直しなど、業務改善を進める。

一定期間ごとに、設計部門全体、各設計者について、設計業務、設計付帯業務、設計外業務の比率を明確化する。設計付帯業務や設計外業務も重要ではあるが、設計者が業務の半分以上を問合せ対応に費やしているようであれば問題である。Q&A資料を拡充する、設計者以外が対応するなどの対策が必要だ。このように設計業務とそれ以外を明確にすることによって、様々な改善策を講じることが可能である。

また、設計者の記入にかかる負荷を徹底的に低減すること(デジタルツールの採用等も検討)と設計工数把握と改善活動について十分な合意を得ることが正確なデータを集めることにつながるので怠らないこと。

おわりに

パーキンソンの第一法則「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」にもあるように、見積り工数自体が実際の工数に影響を与える可能性がある。また、設計業務の中で工数管理・日程管理が最も難しい仕事の一つであるというのも私の実感である。しかし、設計工数の把握はよい製品や高い利益を生み出す組織を作るために必要不可欠な活動であると確信している。

同時に、近年は技術の高度化や統合化及び要求ニーズの多様化に伴い機械設計に求められるレベルもともに高度化と多様化が進んでいる。そのような状況のなかで高品質な製品開発を行うには効果的な手法を効率的な仕組みとして導入することが必要である。

設計工数の把握は設計プロセス改善のための重要情報になるので計画的に推進したい。

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