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技術士試験 論文例「ⅢCAEの能力をもつ設計技術者の育成」

問題

令和2年 技術士二次試験 機械部門 選択3(機械設計)より

論文例

1.CAEの能力を備えた設計技術者を育成し、信頼性の高い解析結果を得るための課題

1.1.教育と環境の課題(観点:体制構築)

現状は、境界条件の設定やメッシュの粗さ、モデルの簡易化等は個人の知識による判断で行われていることが多い。解析の信頼性が個人の知識のみに依存していることは問題である。信頼性の高い解析結果を得るためには、基準以上の知識を有する設計技術者の教育体制の構築が必要である。併せて、解析業務が適切かどうかのチェックを実施するための体制の運用が課題である。

1.2.解析結果活用の課題(観点:解析)

現状は、解析結果の考察や設計へのフィードバッは

個人の知識・ノウハウにより実施されることが多い。

解析結果を設計にフィードバックしたにもかかわらず別の形でNG箇所が発生するようでは問題である。モグラ叩き的解析設計を回避し本質的な設計改善をどう行うかが課題である。

1.3.妥当性確認の課題(観点:妥当性)

CAEでの解析の信頼性を確保するためには、解析モデルと解析結果の妥当性の確認を行う必要がある。具体的には以下の2点についての根拠を示すことが課題となる。

①理想化したモデルと実際の現象の差異が解析の用途において許容される範囲内か。

②解析結果が別の計算手法を用いて同等の結果を得られるか(桁の一致や変数を代えた際の変化の一致が確認できるレベルで可)。

2.最重要課題とその解決策

2.1.最重要課題

解析結果活用の課題を挙げる。理由は「解析結果の正しい考察と解析結果の適切な設計反映ができる事」がCAE能力を有する設計技術者の理想像と考える為である。

2.2.解決策

2.2.1.統計的手法の活用

現状は、個人のノウハウに依る形状の最適化を品質工学の手法を用いて形状変数を見出す。以下の手順で実施する。①形状変数の制御因子と誤差因子(負荷のばらつきや可変を許容する形状変数)の水準を直交表に割り当てる。②直交表の組み合わせで解析を実行する。③要因効果図から許容応力を満たす変数の最適値を推定する。④推定した最適値で確認解析を行う。これにより個人のノウハウに依らない信頼性の高い解析と設計が可能になる。

2.2.2.トポロジー最適化の活用

現状は、個人のノウハウに依る形状の最適化をトポロジー最適化の手法を用いて最適形状を見出す。以下の手順で行う。①目的:重量や許容たわみ量など達成したい条件を決める。②境界条件:設計空間と非設計及び境界条件を決める。③最適化計算実行④実現可能性:計算結果の製造性などを評価する。これにより個人のノウハウに依らない信頼性の高い形状最適化が実施できる。

2.2.3.データベースの活用

現状は、解析で得た知識は個人のものとして保有されている。これをカテゴリ毎に管理共有し組織の知識として利用する。また、蓄積したデータ及び実製作品との比較から解析結果の判断基準(このカテゴリであれば安全係数は1.5にする)などのガイドラインを構築していく。これにより個人のノウハウに依らない信頼性の高い設計が実施できる。

3.解決策を実行した上で生じる波及効果と懸念事項

3.1.波及効果

3.1.1.品質工学の効果で下流工程でも再現性の高いロバストネスな設計品質が確保できる。

上が期待できる

3.2.懸念事項とその対応

3.2.1.解析技術の進歩により管理している設計情報が古くなり陳腐化する懸念がある。対応策として、年に1回の技術更新の要不要を判断するDRを実施する。

3.2.2.解析業務の追加により設計技術者の工数負荷が大きくなる懸念がある。対応として、類似案件に関しては差異点のみを対象とした解析でOKとする解析省力化のルートを設定する。

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論文骨子

論文作成検討に用いた骨子