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機械設計技術者試験1級 論文例「効果的な検図」

問題

機械設計技術者試験1級 R2 小論文より

検図の主目的は、ミスや不完全の排除、技術上の改善や向上、コストの低減などであり、自己検図以外に上司、先輩、同僚、後輩による検図が行われている。あなたが考える効果的な検図法について述べなさい。

論文例

はじめに

精度の良い図面は生産性を高め、製品の品質向上やコストダウンにも繋がる。
その半面、設計ミスは、たとえ1つであっても、複数の部品の作り直しに繋がったり、設計のやり直しを迫られたりと、会社や顧客に大きな損害を与える。全ての設計者はミスの無い正確な図面を書くことを目指していると思うが、なかなか100%の完成度の図面を一度で仕上げることは困難である。
 ミスの無い図面に仕上げる為には、何度も検図作業を行い、図面ミスを一つ一つ潰していく必要がある。しかし、検図については学ぶ機会も少ないため、多くの会社では経験を積んだ設計者だけが検図を一手に引き受けていて、経験豊富な設計者の力が生かされていない現状がある。
 製図者自身が自分の書いた図面をチェックし自信を持って完璧な図面を提出し最終検図を受けることで、経験豊富な設計者の力が発揮される機会が増え、さらに良い品質を作り込む機会が増える。
 各設計者が共通した検図のチェックポイントを持つことにより、客観性を確保し、検図に割かれる時間を短縮しつつ、検図漏れを極力減らすことに繋がる。以下に具体的な検図の方法のポイントについて述べる

検図の方法

  1. 検図する図面を紙に出力する。
    CADのPC画面上でチェックしただけでは見落としがちになるので、図面を紙で出力して検図を行う。確認した寸法・公差にはレ点のチェックマークを入れる。
  2. 設計のチェック
    • 設計寸法を確保できているか
      • 設計計算書の検証、設計審査は別途実施されているとして公差を含めた寸法を計算書と照合して確認する。(例えば、計算書に記載されている強度上必要な肉厚が32mmの場合、図面上の肉厚を指示する寸法が32±0.2では不可である。公差下限は0以上に修正しなければいけない。)
    • 組み合わせ部品は互いに正しいか
      • 相手部品がある場合は取付形状や公差を含めた寸法を互いにチェックする。
      • 互いに組合せる軸部品と穴部品は同時に図面を照合してはめ合いをチェックする。
      • ねじとボルト穴の組合せについても、サイズ、本数、ピッチ(またはP.C.D.)を互いにチェックする。
      • Rと、面取りCを組合せる部品は、C>Rであることを確認する。
    • 分解組立が可能であるか
      • 部品を取り付ける過程でたどる道中や分解組立の配慮が、図面に盛り込まれているかどうかをチェックする。
      • 重量に見合うアイボルトなどの安全な吊り手段が設けられているかチェックする。
    • 加工上問題がないか
      • 加工することができるのか、また加工作業者に見やすい図面となっているのかをチェックする。
    • 材料及び熱処理は適切か
    • 過剰要求ではないか
      • 必要な要求を超えた加工精度が指示されていないかチェックする。
    • 過去のトラブル対策はとられているか
      • 過去のトラブルに基づいて使用禁止になった加工方法や材料を使ってないかチェックする。
  3. 製図規則のチェック(JIS及び社内の製図ルールに則った製図を行っているかのチェックを行う。)
    • 必要に応じて部分投影図、局部投影図を適切に用いているか
      • 正面図(主投影図)の選択が適切で、できるだけ多くの寸法が正面図に記入されているか
      • 断面の取り方や、断面図示は適切か寸法表示は適切か
      • 寸法公差、はめ合いの表示は適切か
      • ねじ、穴の寸法表示は適切か
      • 表面性状の指示は適切か
      • 幾何公差の表示は適切か

おわりに
 以上のように、検図作業はルールとチェックリストの徹底により効果的な仕組みを構築できる。また、一部の経験豊富な設計者への負担も他の設計者へ分散することで効率的な設計の遂行も促される。
 さらに、波及効果として経験豊富な設計者のノウハウが明文化されてルールやチェックリストに反映されることで技術伝承の促進にもつながる。

小論文科目では、設計者としての分析洞察力、将来展望、社会認識や責任能力について評価される。

今回は、検図の重要性と実際に自身で実施している方法についてですね

普段の業務で当たり前のようにやっている内容かもしれないが言語化したことがないといきなり文章にするのは大変だと思う。
試験準備として、日常の各業務がなんのために存在するか意識してみるとよい