問題
機械設計技術者試験1級 R1 小論文より
即戦力を備える方法について
設計力を備えている企業であれば、企業規模に応じた新製品を適時適切にだすことができる。このためには企画力と設計の即戦力が必要であり、⾧期的な視野のもとに設計の人材を養成していく体制づくりが重要である。設計部門の即戦力を備える方法、実践すべき方策について述べよ。
論文例
即戦力を備える方法について
企業規模に応じた製品を適時適切に出せる。このためには企画力と設計の即戦力が必要である。
長期的視野での人材育成と体制づくり大切である。設計の即戦力の実践と方策について述べよ
1はじめに
技術の高度化と統合化及びニーズの多様化が進むとともに設計部門に求められるレベルも増している。そのような状況の中で求められるニーズに機械設計部門としてこたえるには人材育成を含めた組織体制と設計力を発揮するための方針が明確化していることが必要である。
2組織体制と人材育成
コンピテンス管理:メンバーの能力、資質の把握をする。各メンバーに必要なコンピテンスは一様ではなく、設計課題に応じて適切なメンバーをアサインできるように準備しておく。
- 求められるニーズに対応するために機械設計者として必要な能力、スキル及び資質をリスト化する。
- リストの項目に対して各メンバーの習熟度を判定し記載しコンピテンス管理を行う。
- コンピテンスは基礎項目と応用項目に分類される。基礎項目(基本の力学や自社製品について)については社内教育等で全メンバーが一定上のレベルになるように計画する。応用項目については各メンバーに合わせてそれぞれの教育計画(社外セミナーや視察)を立てる。
3 設計力
機械設計業務のコア業務は①顧客及び市場のニーズの分析②設計諸元のパラメータの設計。である。この2点を中心に設計力を発揮し即戦力を実践するための方策を3つ述べる。
QFDの導入
QFD(品質機能展開表)は要求される品質及び機能と機械側の構成との対応を明確にするための手法である。
設計業務は顧客及び市場のニーズをつかみ問題点を抽出し設計課題として設定することから始まる。QFDにより解決すべき課題と検討すべき設計諸元を明らかにできるので適切な設計工数の投資を計画できる。また最初の段階で課題と検討項目を明確にできることで手戻りの削減にもつながる。
コンカレントエンジニアリングの推進
業務推進の方法としてコンカレントエンジニアリング(以下、CE)を取り入れる。
CEは企画、開発/設計、製造、流通販売の工程を同時並行的に進める方法であり上流工程での企画設計情報を早い段階で下流工程の担当者と共有することで工程の着手前倒しを促し開発期間を短縮することができる。また下流工程の検討で発生した問題点を上流工程の担当者が入手し共有できることでより広い視点で解決策を検討できる。ただし同時並行的な作業のため設計変更の影響範囲が大きくなる場合があるので初期段階でのQFDをベースにした十分な検討が重要となる。
標準化の検討
ニーズの多様化と適時適切な製品の市場投入ための方策として、標準化戦略を実施する。
標準化はまとまった機能ごとに独立した機器、ユニット、部品等(以下、モジュール)を設定しそれらを組み合わせることでニーズにこたえる製品を構成する手法である。
各モジュールは各機能の使用範囲をカバーし組み合わせることで過不足なく広範囲のニーズにこたえられるように設定する。このためにはQFDを用いたニーズの分析と機械構成との対応が明確になっていることが重要である。併せて製造方法や流通方法にも考慮したモジュールを設計するためCEの運用で獲得した情報をフィードバックする。
4 おわりに
以上のように、設計の即戦力を発揮するためには機械設計部門が現状もっているコンピテンスを把握し、合理的な戦略を実施する必要がある。
また、現状もっているコンピテンスと最新の顧客及び市場のニーズとの差が開かないように常に調査を行うことも重要である。