毎回止まる故障より、100回、1000回に1回だけ止まる故障の方が厄介です。担当者が到着したときには正常に戻り、再起動するとアラームも信号状態も変わっている。「センサが悪そうだ」「PLCがおかしいかもしれない」と部品を交換しても、しばらくするとまた止まります。
こうした再現しにくい停止では、最初から原因を当てにいくよりも、止まった瞬間の状態を残し、最初に成立しなかった条件を特定する方が近道です。本記事では、自動機の間欠停止を「ワーク・機構・センサ/電気・制御/環境」の5層に分け、設計者が原因を絞り込む順序を整理します。
安全上の注意:人への危険や設備・製品の二次被害が考えられる場合は、記録より安全確保を優先してください。点検・調整は設備の手順とリスクアセスメントに従い、必要な停止、すべての動力源の遮断、残留・蓄積エネルギーの除去または拘束を行います。非常停止、PLC出力OFF、サーボOFFだけをエネルギー隔離とみなしてはいけません。原因再現のために安全装置やインターロックを無効化してはいけません。
結論:原因探しは「最初に成立しなかった条件」から始める
再現しないトラブルに対して、最初に行うことは部品交換ではありません。次の順序で進めます。
- 安全を確保する
- リセットや再起動の前に、停止時の状態を残す
- シーケンス上、最初に成立しなかった条件を特定する
- 原因候補を5層に分ける
- 仮説ごとに、変更する条件を一つに絞って確認する
- 復旧と原因除去を分け、再発防止を設備仕様へ戻す
- STEP 1安全を確保危険や二次被害が考えられる場合は、記録より安全を優先
- STEP 2リセット前に記録時刻・アラーム・ステップ・ワーク・信号状態
- STEP 3最初の不成立を特定正常サイクルとの最初の違いを探す
ポイントは「どの部品が壊れたか」ではなく、正常サイクルと停止サイクルの最初の違いは何かを探すことです。
なぜ「たまに止まる」は原因不明になりやすいのか
間欠停止では、原因が一つの故障として残らないことがあります。わずかなワーク姿勢の違い、取付部の微小なずれ、センサ信号の瞬断、通信や動作タイミングの重なり、温度上昇、振動、汚れなどが、特定の組み合わせになったときだけ停止するためです。
さらに、現場では生産を再開するためにリセットが優先されます。しかしリセットすると、シーケンスのステップ、タイマの経過値、一時的な入力状態、直前の操作などが変わり、原因を示す情報も消えます。復旧操作そのものが、原因調査を難しくすることがあるわけです。
最初に、安全系による停止、サーボ・インバータなどの保護停止、シーケンス待ちやタイムアウト、電源・通信断、機械的な停止のどれに見えるかを仮分類します。ただし、HMIに表示されたアラーム名だけで原因カテゴリを確定しません。一つの異常から後続アラームが連鎖している場合があるためです。
リセット前に残す情報
安全が確保され、設備のルール上記録できる場合は、少なくとも次の情報を残します。高度な解析装置がなくても、時刻を合わせた写真と短い記録があるだけで、後の調査精度が変わります。
| 残す情報 | 確認したいこと |
|---|---|
| 発生日時 | 始業直後、連続運転後、特定の時間帯などとの関係 |
| 品種・ロット・ワーク状態 | 寸法、反り、バリ、油、姿勢、重なりなどの違い |
| 停止した工程・動作 | どのステーションの、どの動作の途中だったか |
| アラーム履歴 | 最終アラームだけでなく、その直前に何が発生したか |
| シーケンスのステップ番号 | どの完了条件を待っていたか |
| 関連する指令・完了信号 | 指令が出ていたか、実際に動いたか、完了信号が入ったか |
| 圧力・真空・温度・電圧など | 停止前後で変化していないか |
| 直前の操作と変更 | 段取り、清掃、調整、部品交換、プログラム変更の有無 |
「時々止まる」だけでは比較できません。例えば、症状の記録を次の形まで具体化します。
品種Bを連続運転して約2時間後、搬送ステーション3で前進完了信号を待ったまま停止。指令出力はON、機構は途中位置、完了センサはOFF。リセット後は復帰する。
※記録形式を示すための架空例です。
ここまで書ければ、「設備全体」ではなく、前進指令から完了確認までの範囲へ調査対象を狭められます。
動作指令・実際の動き・完了信号を分けて見る
自動機の一つの動作を、まず次の3段階に分けると切り分けやすくなります。
- 動作指令が出たか
- 機構が実際に動いたか
- 完了信号が制御へ戻ったか
| 観察結果 | 優先して確認する範囲 |
|---|---|
| 動作指令が出ていない | 上流の運転許可条件、シーケンス、モード、通信条件 |
| 指令は出たが機構が動かない | 出力、駆動機器、電源・空圧、アクチュエータ、機械的な拘束 |
| 機構は動いたが完了信号が入らない | 停止位置、センサ位置、検出余裕、信号配線、タイムアウト条件 |
| 完了信号が一瞬入って消える | 振動、チャタリング、取付剛性、検出物の姿勢、外乱・ノイズ |
| 完了信号まで正常だが次へ進まない | 次工程との受渡し、通信ハンドシェイク、別の運転許可条件 |
PLC画面で信号を見る場合も、信号を強制的に書き換えるのではなく、権限を持つ担当者が安全な状態で観察します。通常の工程用インターロックと安全関連制御を混同せず、安全機能の変更や無効化は行いません。
さらに詳しく調べる場合は、シーケンス上の指令→PLC内部の出力状態→現場側の出力・配線→弁・接触器・ドライブ→アクチュエータ→機械動作→完了センサ→PLC入力の境界を一段ずつ確認します。PLC内部ビットや表示LEDがONでも、端子電圧、現場機器への伝達、機械の実動作まで証明できるわけではありません。
上流がONでも、その先まで成立した証明にはなりません。番号順に境界を確認します。
- 制御側・1PLC内部の動作指令シーケンス条件・内部ビット
- 現場への境界・2出力端子・現場配線リレー・ケーブル・コネクタ
- 駆動側・3弁・接触器・ドライブ電源・空圧・駆動機器入力
- 機械側・4アクチュエータ・機械動作位置・速度・負荷・拘束
- 帰還側・5完了センサ・信号配線検出位置・余裕・チャタリング
- 制御側・6PLC入力・次工程条件入力端子・フィルタ・取込み
原因候補を5つの層に分ける
一つの現象に対して思いついた部品を順番に交換すると、調整値や取付状態まで変わり、かえって原因が分からなくなります。候補を次の5層に分け、抜けと重複を減らします。
| 層 | 主な確認項目 | 間欠化しやすい例 |
|---|---|---|
| ワーク | 寸法、反り、バリ、表面状態、姿勢、重なり、ロット | 特定ロットや向きのときだけガイドに接触する |
| 機構 | 摩耗、緩み、バックラッシ、摩擦、潤滑、芯ずれ、異物 | 温度上昇や連続運転後だけ抵抗が増える |
| センサ・電気 | 検出余裕、汚れ、取付、コネクタ、断線、電圧、ノイズ、外乱光、相互干渉 | 振動やケーブル姿勢、照明点灯時だけ信号が乱れる |
| 制御・通信 | タイマ、信号保持時間、受渡し、スキャン、通信遅延、異常復帰条件 | 二つの信号の順序が接近したときだけ条件を取り逃す |
| 環境・運用 | 温度、湿度、粉じん、油、空圧、電源、清掃、段取り、作業方法 | 始業直後、清掃後、特定の作業者や時間帯に偏る |
この分類は、どれか一つを犯人と決めるためではありません。例えば「ワークの反り」と「ガイドの摩耗」と「センサの検出余裕不足」が重なって初めて停止する場合もあります。まず各層に候補を置き、停止記録との整合で優先順位を付けます。
センサが「時々反応しない」ときの確認順
センサ交換の前に、センサが本当に入力を出していないのか、それとも信号が短く制御側で確認できていないのかを分けます。確認順の一例は次のとおりです。
- ワークが所定の位置・姿勢まで来ているか
- センサ本体の動作表示とPLC入力が同じ状態か
- 検出距離や受光量に十分な余裕があるか
- レンズ面や反射板に汚れ・油・結露がないか
- 取付部の緩み、振動、ケーブルやコネクタの状態に変化がないか
- 外乱光、隣接センサの相互干渉、動力線からのノイズとの関係がないか
- 信号のON時間が、制御側の取込みやフィルタ条件に対して短すぎないか
光電・ファイバセンサについて、メーカー資料でも外乱光による誤出力やチャタリング、隣接センサの相互干渉、振動による取付の緩み、動力線との近接による誘導ノイズなどが注意点として示されています。部品を新品へ交換して一時的に直ったように見えても、取付や環境が原因なら再発します。
アラームを「停止通知」から「原因調査の入口」に変える
「設備異常」「動作タイムオーバー」だけでは、調査のたびにラダーや図面を開くことになります。アラームには、少なくとも対象、待っていた条件、発生時刻を持たせます。
情報が少ない表示:異常203 設備停止
※表現方法を示すための架空例です。時間値は設備ごとに妥当性を確認します。
調査につながる表示:搬送3 前進タイムアウト:前進指令後、所定時間内に前進端を確認できませんでした
可能であれば、アラーム発生時刻だけでなく、復旧時刻、確認時刻、ステップ番号、関連する指令と完了入力、品種番号などを同じ時刻基準で残します。三菱電機のGOTなど、発生時刻・復旧時刻・確認時刻を履歴として扱える表示器もあります。
PLC、HMI、ドライブ、ロボットなど複数機器の履歴を比較する場合は、各機器の時計が合っているかも確認します。時計がずれていれば、画面上の発生順序と実際の順序が逆に見えることがあります。「一覧の一番上にあるアラーム」を原因と決めず、停止直前に期待値と実測値が最初に分かれた時点を探します。
短時間の信号変化は、HMIの通常ログ周期では捉えられないことがあります。何を、どの周期で、何件残すかは、想定する現象の時間幅から決めます。すべての信号を無期限に保存するのではなく、対象工程の指令、完了、ステップ、主要なアナログ値を絞り、停止やタイムアウトをトリガに異常の前後を追える設計にします。PLCメーカーの開発環境にも、トリガ成立前後のデータを記録してタイミングチャートで確認する機能があります。利用時は、機種ごとの記録周期・容量・制御負荷への影響を取扱説明書で確認します。
一度に複数の条件を変えない
原因候補を挙げたら、仮説と確認結果を表にします。
| 原因仮説 | 仮説が正しければ見える現象 | 安全な確認方法 | 結果 |
|---|---|---|---|
| ワーク反りでガイドに接触 | 停止品だけ反り量が大きい、接触痕がある | 停止品を隔離して寸法と痕跡を確認 | 記録する |
| センサ取付が振動で動く | 停止時に受光余裕が低下、ブラケットに緩み | 停止・エネルギー遮断後に取付状態を確認 | 記録する |
| 信号保持時間が短い | センサ表示は変化するが入力履歴に残らない | 承認された診断機能で時系列を確認 | 記録する |
センサ交換、タイマ変更、速度変更を同時に行って停止しなくなっても、どの変更が効いたか分かりません。基準状態を残し、原則として一度に変える条件を一つにします。安全機能や品質保証条件に関わる設定は、担当者の判断だけで変更せず、所定の変更管理と妥当性確認を行います。
「復旧した」と「原因を除去した」を分ける
リセット、再起動、清掃、部品交換で動き始めたことは、復旧の事実です。しかし、それだけでは原因を特定したことになりません。
- 復旧:設備を再び動かせる状態に戻した
- 原因除去:停止を起こした条件を説明し、その条件を取り除いた
- 再発防止:同じ異常を早く検出できる、または同じ原因が起きにくい設計へ変えた
「新品センサへ交換後、1週間止まらなかった」だけでは、交換が効いたのか、清掃や配線の触り直しが効いたのか、単に発生条件がそろっていないのか判断できません。対策後は、原因仮説に対応した確認項目と観察期間を決めます。
再発防止を設備仕様へ戻す
トラブルが解決しても、担当者の記憶だけに残すと、次の設備や担当交代で同じ問題が繰り返されます。原因に応じて、次の設計情報へ反映します。
- 要求仕様書と受入判定基準
- センサ選定・取付基準と検出余裕の確認方法
- アラーム名称、履歴、保存する信号
- 配線・配管・コネクタの施工基準
- 清掃・点検・交換周期
- 設計レビューのチェック項目
- 変更履歴とトラブル記録
設備停止の情報を設計へ戻すことは、単なる保全活動ではなく、次の設備を止まりにくく、調べやすくする設計活動です。属人化を防ぐ考え方は、技術継承の記事、設計段階での確認方法は機械設計レビューの記事でも解説しています。
再現しない設備停止のチェックリスト
- 人と設備の安全を最初に確保した
- 安全装置を無効化せずに調査している
- リセット前の画面、時刻、ワーク状態を記録した
- 最後のアラームだけでなく直前の履歴も確認した
- 最初に成立しなかった条件を特定した
- 指令・実動作・完了信号を分けて確認した
- 原因候補を5層に分けた
- 良品サイクルと停止サイクルを比較した
- 一度に変更する条件を一つにした
- 復旧と原因除去を区別した
- 対策後の確認方法と観察期間を決めた
- 結果を仕様、図面、プログラム、点検基準へ反映した
まとめ
自動機がたまに止まるときは、原因部品を当てることから始めません。安全を確保し、停止時の状態を残し、シーケンス上で最初に成立しなかった条件を特定します。そのうえで、ワーク・機構・センサ/電気・制御/環境の5層から仮説を立てます。
リセットで動いたことは解決ではありません。「なぜ止まったかを説明できる」「対策が効いたことを確認できる」「次に同じことが起きたとき証拠が残る」ところまで設計へ戻して、初めて再発防止になります。
参考資料
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第107条
- 厚生労働省「機械の包括的な安全基準に関する指針」
- 長野労働局「機械設備による災害防止対策」
- キーエンス「外乱光を防ぐ」
- キーエンス「相互干渉を防ぐ」
- オムロン「フォト・マイクロセンサ 使用上の注意」
- オムロン「Sysmac Studio データトレース」
- 三菱電機「GX Works2 デバッグ機能」
- 三菱電機「MELSECシステムレコーダ」
- 日本電機工業会「汎用PLC定期点検のおすすめ」
編集:技術士ギルド編集部(機械設計・FA領域)/資料確認日:2026年9月20日