キーワード学習とは、試験に出題されそうなキーワードを過去問題や国省庁の資料から抽出して、その内容を調べてまとめる勉強法です。
「知識量」と「文章記述力」の向上に効果的なだけでなく、「解答の引き出し」を用意することにも有効な方法のため技術士2次試験の学習手段として有名講座や試験合格者から推奨されています。
本日は、キーワード学習の効果と効率的なやり方について解説致します。キーワード学習のポイントは「論文を作り上げるためのキーワード」をいかに準備するかが大切になります。
本記事を読んでいただけたら単なる「知識量を増やすだけのキーワード学習」じゃない効果的な方法をご理解いただけるはずです。
キーワード学習は論文対策として効果的
2次試験では専門的知識を用いた論文記述による解答を求められます。
キーワード学習の効果は知識を増やすことと文章の記述力を向上させることに加えて「解答の引き出し」を用意することの3つです。
つまり、過去問や関係省庁の資料を読み、重要なキーワードについて調べることで知識を増ふやし、調べた内容を200~300字程度でまとめることで記述力の訓練となります。さらに、論文解答例から解答によく使われているキーワードや自身の業務の中で論文作成に使いそうなキーワードを抽出しまとめることで論文に使える「解答の引き出し」を用意できます。
実際、2次試験の選択(論文)Ⅱ-1問題は、キーワード学習で得た知識を問題に合わせて詳細に書くだけで合格レベルの論文になります。必須(論文)Ⅰ、選択(論文)Ⅱ-2やⅢの問題でも、キーワード学習で得た知識を応用して論文を作成することになります。(逆に、論文で使わないようなキーワード学習をしないようにすることも大切です)
また、長い論文も分解すれば短い文章をつなげているだけです。キーワード学習でわかりやすい文章がを書くことがわかりやすい論文を書く練習になります。
キーワードの抽出は、論文作成を意識して行う
キーワードの抽出先は次の4つから抽出します。※総監部門は文部科学省が公開している資料がありますので優先してください。
- ①過去問題
- ②関連白書
- ③過去問の解答例
- ④自身の専門や業務
①過去問題で試験の範囲を網羅したキーワードを抽出し、②関連白書でトレンド系のキーワードを抽出します。
③過去問の解答例と④自身の専門や業務からは実際に論文作成時に利用できるキーワードを抽出します。
①過去問題|まずは過去3年分
2次試験の筆記試験の論文問題数は8~10問です(必須Ⅰは定期的に択一問題と論文問題が入れ替わります)
項目 | 問題数 |
必須Ⅰ | 2 |
選択Ⅱ-1 | 4 |
選択Ⅱ-2 | 2 |
選択Ⅲ | 2 |
選択(論文)Ⅱ-1の問題からは、問題内容になっている手法や要素などを抽出します。
必須(論文)Ⅰや選択(論文)Ⅱ-2、Ⅲの問題からは、問題のテーマや問題文中のわからない語句を抽出します。
1問から1~2つのキーワードが抽出できるので3年分から抽出すると約30個になります。
②関連白書|まずは部門に関わる白書
各省庁が発行する白書には次のようなものがあります。この中から自身の部門にかかわる白書を選択し文章中のテーマやわからない語句を抽出します。最初から細かいキーワードまで選ぶ必要はなく学習を進めていく中で必要になったら随時追加するつもりで抽出します。
- 水循環白書 内閣官房
- 経済財政白書 内閣府
- 原子力白書 内閣府
- 防災白書 内閣府
- 高齢社会白書 内閣府
- 消費者白書 消費者庁
- 少子化社会対策白書 こども家庭庁
- 地方財政白書 総務省
- 情報通信白書 総務省
- 公害紛争処理白書 公害等調整委員会
- 開発協力白書・ODA白書外務省
- 科学技術白書 文部科学省
- 労働経済白書 厚生労働省
- 食料・農業・農村白書 農林水産省
- 森林・林業白書 林野庁
- 水産白書 水産庁
- 通商白書 経済産業省
- 製造基盤白書(ものづくり白書) 経済産業省
- エネルギー白書 資源エネルギー庁
- 特許行政年次報告書 特許庁
- 中小企業白書 中小企業庁
- 国土交通白書 国土交通省
- 土地白書 国土交通省
- 首都圏整備に関する年次報告(首都圏白書) 国土交通省
- 交通政策白書 国土交通省
- レポート海難審判 海難審判所
- 運輸安全委員会年報 運輸安全委員会
- 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書環境省
自身の部門にかかわる白書の次に環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書と高齢社会白書、エネルギー白書はどの部門にとっても重要な社会課題について書かれているので時間が許せば一読してください。
次の③過去問の解答例からのキーワード抽出をやると最初に書く論文のレベルがぐっと上がるのでぜひ実施していただきたいです。
③過去問の解答例|最新年度の解答例は必要
過去1年分でいいので解答論文の中からキーワードを抽出します。
選択(論文)Ⅱ-1の問題からは、あまり必要ないかと思いますが、わからない語句等があれば抽出します。
必須(論文)Ⅰや選択(論文)Ⅱ-2、Ⅲの問題からは、課題の観点(例えば、「海洋プラスチックの観点」)や解決策(例えば、軽量化の解決策として「○○」という材料を使用する)、リスク・懸案(例えば、○○という材料は「水素脆性」影響が・・・対策として「△△処理」を・・・)の文中からわからない語句や自分で論文を書く際に使えそうなキーワードを見つけて抽出します。
解答例は有料講座などでも入手できますが、単品で購入できるのは「新技術開発センター」の「復元論文集」です。(「新技術開発センター」には模範解答と解説のついた「解答例集」という書籍もありますが、実際に合格した論文が読める「復元論文集」の方をおすすめします。)
④自身の専門や業務|ふだん経験則でやっていることをよく整理する
自身の専門や業務からもキーワードを抽出することができます。
技術士を目指す方はすでに多くの実務をこなしており自身の業務について経験則で判断している部分があるかと思います、例えば、多数のパラメータによって変化する課題があったときに多変量解析や品質工学的な実験評価をせずに経験則で答えを導き出していませんか?
経験則や感覚でやっていることをよく分析しそれが実はどんな科学的手法なのかを調べてください。経験則でやっていた手順と科学的手法の正規の手順を比べて改善点や工夫点(世紀の手順をどんな経験則で省略できていたのか)についてまとめてください。
これは非常に重要で、あなたの実務経験が科学的手法利用した経験であるということは、あなたは他の業務でもその科学的手法を応用できるということになります。これが、技術士2次試験の筆記試験全体で問われる「専門的学識」です。
キーワード学習の段階でここまで理解できればベストですが、実際はなかなか難しいと思います。まずは、これまでの業務や日々の業務を「論文のネタにならないかなあ」という視点で見ることから始めていただければ十分です。
キーワード抽出は、まずは30~50個程度
抽出は、まずは30~50個程度にします。次のキーワードをまとめる段階や論文作成の学習の中でどんどん増えていくので最初の段階で多すぎると論文学習の開始が遅くなってしまいます。
キーワードまとめは、キーワード同士のつながりを意識して行う
キーワードまとめは、200~300字で次のような内容について記述します。
- キーワードの内容
- 概要とメリットやデメリットについてまとめる
- 実用上の注意点
- 経験を踏まえて、注意しなければならないことを挙げる
- 課題
- キーワード上の問題点があれば、その解決の方向性について、例えば、人口減少というテーマに対しての課題を考える。
- 今後の展望
- 今後について白書や業界専門誌などを参考にまとめる。
キーワードまとめの例
キーワード:FMEA
FMEAは、「設計の不完全や潜在的な欠点を見出すために構成要素の故障モードとその上位アイテムへの影響を解析する技法」である。FMEAでは、故障モードと故障を明確に分ける。例えば、断線、短絡、折損、摩耗、特性の劣化などは故障モードである。故障そのものではなく、故障をもたらす不具合事象の様式分類である。一方、故障とは機能障害である。何もなくただ機能しないということはありえなく、その製品が機能しない原因となる不具合が必ずある。
また、抽出したキーワードをすべてまとめる必要はありません、分からないキーワードや改めて整理が必要なキーワードだけまとめて次のステップに進んで良いです。
分かりやすく書くことや経験を踏まえて書くことが大切ですが、筆者が特に意識してほしいことは、キーワード同士のつながりです。
例えば、IoTとやメタバースといったキーワードについて、IoTはメタバースを構築するための技術でもあり、IoTとメタバースはDXを推進するための一つの手段です。そうすると、IoTとやメタバース以外にもキーワード「???」が見つかります。
このように抽出したキーワード同士の関連性を意識しまとめることで理解が深まると同時に解決策でIoTを挙げた際にメタバースという専門的学識をアピールするキーワードを論文中に記述できるようになります。 注)例なので、メタバースというキーワードがアピールになるかは不明です。
筆者は、ある程度キーワード抽出が終わったところでキーワードのマインドマップを作成することでキーワード同士の関連性を整理しました。
「手書き」か「デジタル」かは、繰り返し見返せるほうを選ぶ
良く、「手書き」のほうが記憶の定着が良いとわれていますが、「手書き」か「デジタル」かよりは「繰り返しインプット」することのほうが重要です。手書きのノートよりもスマホなどのデジタルデバイスの方が隙間時間を使いやすいのであればキーワード集はデジタルデータで作成しましょう。
キーワード集に便利なアイテムはある?
デジタルキーワード集の作成に便利なアイテムとして単語帳アプリ「Ankilot」というものがあるので紹介します。下記の方のようにキーワード集を共有してくれている方もいるので調べてみてもいいかもしれません。
技術士(機械部門)のキーワード学習として、「Ankilot」という単語帳作成サービスを利用してコツコツとキーワードを登録してました。キーワードがようやく100個になったので共有します。今後も追加していきます。https://t.co/k2cTpsgRJd
— つねぞう (@makino_fan) February 11, 2024
抽出キーワードのサンプル
下記に機械部門(機械設計)のキーワードを抽出した際のサンプルを置いておきます。よろしければ参考にしてください。
キーワードは主に過去問題(H26からR5)及び製造基盤白書(ものづくり白書)から抽出しました。簡単なエクセルですがお問い合わせからご連絡いただければエクセルシートを差し上げます。
最後に
本日は、技術士二次試験の効果的なキーワード学習について解説しました。
キーワード学習は、「知識量」と「文章記述力」の向上に効果的なだけでなく、「解答の引き出し」を用意するためにも有効な方法です。
本記事で紹介した「論文作成を意識した」キーワード学習で論文作成の基礎力を獲得してください。
本ブログでは技術士試験の合格のための記事を用意してます。キーワード学習の次にやるべきことも書かれたロードマップ記事も用意していますのでご確認いただければと思います。
また、技術士を目指す方には、有料講座を利用する方法も効果的です。こちらの記事でおすすめの有料講座を比較紹介しているのでご参考にしてください。
ご精読ありがとうございました。