本記事では、エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラという製造業における外観検査に欠かせない技術に焦点を当てます。エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラがどのようなものかを比較解説します。また、どちらを選ぶべきかについても考察し、具体的な選定条件と参考事例を挙げます。
本記事は、製造業に携わる皆さんがエリアスキャンカメラとラインスキャンカメラを理解し効果的に活用するための信頼できる情報源となることでしょう。
エリアスキャンカメラとは

エリアスキャンカメラとは、撮影対象を「面」で撮影するカメラです。画像検査の分野で広く利用されている最も一般的なカメラです。ラインスキャンカメラと比較して一般的に普及していることから安価である点や柔軟に撮像環境を構築できるなどのメリットがあります。例えば、複数のカメラを撮影対象の周りに配置したり、産業用ロボットにカメラをつけて複数の箇所の撮影することも可能です。一方で、撮影の範囲が限られているため、撮影対象が大きい場合には向いていない点や撮影の範囲全体に照明を当てる必要があるため、照明ムラが起きやすい点がデメリットです。
ラインスキャンカメラとは

ラインスキャンカメラとは、対象を「線」で撮影するカメラです。撮影対象またはカメラを移動させながら撮影し、線で撮影した画像をつなぎ合わせて全体の画像を作りあげます。例えば、コピー機やスキャナー機で、機械の光が移動して撮影対象をスキャンしていますが、ここにもラインスキャンカメラが使われています。撮影の範囲が限られているエリアスキャンカメラでは困難なシート状搬送物や、照明ムラの起きやすい曲線面などの撮影に適しています。一方で、ピントの調整が比較的困難だったり、スキャンのための搬送設備が必要だったりとエリアスキャンカメラと比較すると取扱いにノウハウを必要とします。ラインスキャンカメラは基本的には得意領域での利用を想定したカメラです。
5つの観点からエリアスキャンカメラとラインスキャンカメラを比較
エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラは、製造業での外観検査において重要な役割を果たしますが、それぞれ異なる得意領域を持ちます。次の5つの観点から比較し、目的に応じた適切なカメラを利用するようにしましょう。
撮影対象のサイズ
エリアスキャンカメラは、「面」で撮影対象を撮影します。このため、撮影対象の大きさはカメラの撮影範囲に収まるサイズに限定されます。複数台のカメラの画像をつなぎ合わせることで大きな対象を撮影し検査することは可能ですが、画像処理のためのリソースや計算時間が必要になります。例えば、ナットやワッシャのような小型部品のサビ有無の検査や検査範囲位置が固定されているバーコード認識、OCRによる賞味期限やシリアル番号の判定などに適しています。
一方、ラインスキャンカメラは、撮影対象が撮影ライン上を通過する際に撮影し、連続的な画像を生成します。このため、搬送方向のサイズの制限はありません。エリアスキャンカメラでは難しいロールシートなどの検査を行うことが可能です。
画素数

エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラでは画素数の考え方が異なります。
エリアスキャンカメラは、「垂直 × 水平」の面積の画素数で表すのに対して、ラインスキャンカメラはラインの画素数で表します。上図の例では500万画素のエリアスキャンカメラの垂直方向画素数は2050に対して、ラインスキャンカメラ垂直方向画素数は4096となり、垂直方向画素数はラインスキャンカメラのほうが高くなります。また、ラインスキャンカメラの水平方向画素数は、カメラのスキャンレート(画像を1秒にどのくらい取得するかを表した数値)と撮影対象の移動速度を設定することで必要な画素数を得ることができます。
カメラの解像度のラインアップは、エリアスキャンカメラの方が選択肢が豊富です。ラインスキャンカメラは高解像度の製品を中心にラインアップしている傾向にあります。検査の要求精度に応じて選定するようにしましょう。
必要画素数について
ここでカメラ選定における必要画素数について確認しておきます。
必要画素数は「撮影範囲 ÷(最小検知サイズ ÷画素分解能)= 必要画素数」で計算できます。垂直方向と水平方向両方について確認が必要です。最小検知サイズは想定する傷等の大きさのことです、画素分解能は最小検知サイズの傷等を安定的に検知するために必要な画素数で検査目的や設備環境に寄りますが一般的に5画素程度といわれています。例えば、撮影範囲50mm÷(最小検知サイズ0.1mm÷画素分解能5)=必要画素数2500となります。
照明

エリアスキャンカメラは、広い範囲を撮影するため、場所によって照明の当たり方が異なり、画像の明るさがバラついてしまいます。一方、ラインスキャンカメラでは、撮影範囲全体で照明とカメラの位置が一定なので、画像が一様に撮影され、検査の精度が向上します。特に表面の細かな凹凸などの不良の検出や円筒形などのRがかかった曲面検査に対して効果的です。
設置レイアウト

エリアスキャンカメラは、撮影範囲が広いため画角の範囲に障害物となる構造物等を配置できません。一方、ラインスキャンカメラは撮影幅がせまいため、周辺の構造物のレイアウトを比較的自由に設計できます。これにより、照明の光や外光環境にさらされたくない食品や医薬品の外観検査でカバー等の保護が設置できます。
周辺設備
エリアスキャンカメラでは不要ですが、ラインスキャンカメラには撮影対象(またはカメラ)を搬送するための設備が必要になります。搬送設備の品質(速度安定性や振動の少なさ)は形成される画像の品質に影響するので検査要件から逆算し選定する必要があります。
また、エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラに共通して必要な周辺機器として一般的にはカメラ、レンズ、フィルター、インターフェースボード、パソコン、照明装置等の機器が必要となります。各機器の役割は、照明で照射された対象物からの光をレンズを通してカメラのセンサが受光し、輝度値データへ変換されインターフェースボードへ送られます。そのデータをPCにて処理し、様々な結果を取得します。
エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラのどちらを選ぶか
まずは安価で選択肢の多いエリアスキャンカメラを検討し、ラインスキャンカメラが向いている条件に当てはまる場合にはラインスキャンカメラの採用を検討することをお勧めします。
以下にラインスキャンカメラが向いている条件と参考となる事例を紹介します。
ラインスキャンカメラが向いている条件
ラインスキャンカメラが向いている条件としてつぎの3点があげられます。この条件に当てはまる場合はラインスキャンカメラ、当てはまらない場合はエリアスキャンカメラを検討しましょう。

3つの参考例
参考例として、ラインスキャンカメラが採用されている検査の事例を3つ紹介します。
幅寸法の連続計測検査
検査対象(例えば、ゴム、鋼板、フィルム、繊維シートなど)の幅寸法を連続測定します。検査対象がラインスキャンカメラと照明の間を通過する時に照明からの光を遮光します、遮光された画素数からの計算で検査対象の幅を計測します。

幅の広い検査対象の場合は、カメラを並べて配置し画像をつなぐためのシステムを構築します。
個数計数検査

ラインスキャンカメラ撮影範囲を通過する検査対象の個数を計数します。量産される製品の個数を計数します。検査対象がカメラの視野内を通過する際に対象画素部分が、遮光されるので、その画素数や遮光時間などで判定し計数します。
表面検査

検査対象の表面を検査し、欠点や異物などの有無を検出します。検査対象に照明光を照射し、反射光をカメラで受光することにより物体の表面状態の情報を取得し、画像処理し判定します。照明とカメラの位置が一定に保たれることで、画像品質が安定するので高い信頼性の表面検査が可能になります。
ラインスキャンカメラでは円筒形状(軸部品など)の対象物を回転させながら撮影することにより、対象物の表面を平面をして取得することができます。曲面の形状による陰影の影響を受けずに検査することができます。
最後に
本記事では、製造業における外観検査に不可欠な技術であるエリアスキャンカメラとラインスキャンカメラについて解説しました。両者の特徴や適用範囲、選定ポイントなどに焦点を当て、どちらを選択すべきかを理解するのに役立つ情報を提供しました。
製造業における外観検査は非常に重要であり、適切な検査技術の選択は製品品質向上に直結します。エリアスキャンカメラとラインスキャンカメラの比較を通じて、読者が自社のニーズに合ったカメラを選択し、効果的に活用できるためのご参考になれば幸いです。