キーワード学習は、過去問や資料から必要な用語・考え方を取り出し、自分の答案で使える知識に整理する学習です。用語集を作ることが目的になると、調べる時間ばかりが増えてしまいます。
この記事では、用語の選び方、まとめ方、答案で使えるかを確かめる方法を解説します。総合技術監理部門を除く技術部門を主な対象に、機械部門の例を使って説明します。
学習全体の中での位置づけは論文対策12ステップの計画へ。この記事では、まず過去問1問と数個のキーワードを使い、調べた知識を答案に戻すところまで試してみましょう。

キーワード学習は論文対策として効果的
2次試験では専門的知識を用いた論文記述による解答を求められます。
キーワード学習では、知識を確認するだけでなく、短く説明する練習と、解答の引き出しの整理を行います。200〜300字程度にまとめる方法は練習の一例です。すべての用語を同じ字数にそろえるより、意味・使う場面・注意点が自分の言葉で説明できるかを確認しましょう。
例えば選択科目Ⅱ-1でも、知っている内容を書くだけではなく、問題で求められた説明に答える必要があります。用途、特徴、適用上の留意点など、問われた項目を先に確認してください。ほかの科目でも、知識を問題の条件に合わせて使うことが大切です。
短い説明を書く練習は、答案の各段落を具体化する準備になります。ただし、説明文を並べるだけでは論文になりません。課題と対策、対策とリスクなどのつながりを確かめましょう。
キーワードの抽出は、論文作成を意識して行う
抽出先は主に次の4つです。どれも全部読み切ってから始める必要はありません。自分が解いている問題に関連する範囲から確認します。総合技術監理部門の方は、受験年度の公式キーワード集など対象部門の資料を確認してください。
- ①過去問題
- ②関連白書
- ③過去問の解答例
- ④自身の専門や業務
①過去問題で出題の範囲と不足する知識を確認し、②関連白書で背景や課題を調べます。③解答例は知識の使い方を比較する材料、④実務は判断や適用条件を具体化する材料として使います。過去問だけで試験範囲を網羅できるという意味ではありません。
①過去問題|直近の問題から不足する知識を見つける
まず手元にある直近の過去問を1問読み、対象・条件・問われていることを確認します。その後、数年分に広げて繰り返し登場するテーマを探しましょう。3年分は作業の区切りの一例であり、十分な学習量を保証するものではありません。
令和8年度の実施大綱では、総合技術監理部門を除く技術部門の筆記試験は記述式です。「必須Ⅰが定期的に択一式と記述式で入れ替わる」という制度ではありません。出典:技術士第二次試験実施大綱。
選択(論文)Ⅱ-1の問題からは、問題内容になっている手法や要素などを抽出します。
必須(論文)Ⅰや選択(論文)Ⅱ-2、Ⅲの問題からは、問題のテーマや問題文中のわからない語句を抽出します。
抽出する数は、問題と自分の理解度によって変わります。まずは「意味が分からない」「適用条件を説明できない」言葉を数個選び、過去問題分析の手順に沿って何のために調べるかを決めましょう。
②関連白書|まずは部門に関わる白書
白書は、最新の話題を大量に集めるためではなく、問題の背景・現状を示すデータ・政策や技術の課題を確認するために使います。部門に関係する資料を選び、目次から必要な章を探してください。資料の選び方や読み方は資料分析の記事で解説しています。下の一覧には、これまで紹介してきた白書・年次報告の入口をまとめています。
白書・年次報告の参考リンクを開く
- 水循環白書 内閣官房
- 経済財政白書 内閣府
- 原子力白書 内閣府
- 防災白書 内閣府
- 高齢社会白書 内閣府
- 消費者白書 消費者庁
- こども白書(過去の少子化社会対策白書等を含む) こども家庭庁
- 地方財政白書 総務省
- 情報通信白書 総務省
- 公害紛争処理白書 公害等調整委員会
- 開発協力白書・ODA白書外務省
- 科学技術・イノベーション白書 文部科学省
- 労働経済白書 厚生労働省
- 食料・農業・農村白書 農林水産省
- 森林・林業白書 林野庁
- 水産白書 水産庁
- 通商白書 経済産業省
- 製造基盤白書(ものづくり白書) 経済産業省
- エネルギー白書 資源エネルギー庁
- 特許行政年次報告書 特許庁
- 中小企業白書 中小企業庁
- 国土交通白書 国土交通省
- 土地白書 国土交通省
- 首都圏整備に関する年次報告(首都圏白書) 国土交通省
- 交通政策白書 国土交通省
- レポート海難審判 海難審判所
- 運輸安全委員会年報 運輸安全委員会
- 環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書環境省
読む資料を増やす前に、「この章はどの課題の根拠に使えるか」「データはいつの・どの対象のものか」「自分の部門では何が論点になるか」を1つずつメモしましょう。図表や数値には出典・年度を残し、別の条件のデータをそのまま一般化しないようにします。
白書の整理が終わらなくても、必要な根拠が確認できたら答案作成に戻ります。次の解答例の読み方も、調べ続けるのではなく自分の答案を改善するために使ってください。
③過去問の解答例|使う理由と条件を読み取る
まず1問について、自分の骨子と解答例を比較してみます。解答例や再現答案は、公式の採点結果や唯一の正解と同一ではありません。用語だけでなく、問いにどう答えているかを読みましょう。
選択科目Ⅱ-1では、説明が求められた項目に過不足がないか、どの程度の具体性で説明しているかを比べます。不明な用語や根拠は、別の信頼できる資料でも確認してください。
必須(論文)Ⅰや選択(論文)Ⅱ-2、Ⅲの問題からは、課題の観点(例えば、「海洋プラスチックの観点」)や解決策(例えば、軽量化の解決策として「○○」という材料を使用する)、リスク・懸案(例えば、○○という材料は「水素脆性」影響が・・・対策として「△△処理」を・・・)の文中からわからない語句や自分で論文を書く際に使えそうなキーワードを見つけて抽出します。
解答例は書籍や講座などでも確認できます。以前紹介した新技術開発センターの教材などを利用する場合も、対象年度・技術部門・解説の有無を確認してください。購入は必須ではなく、自分の答案に足りない点を検討する材料として使います。
④自身の専門や業務|ふだん経験則でやっていることをよく整理する

自身の専門や業務からもキーワードを抽出することができます。
技術士を目指す方はすでに多くの実務をこなしており自身の業務について経験則で判断している部分があるかと思います、例えば、多数のパラメータによって変化する課題があったときに多変量解析や品質工学的な実験評価をせずに経験則で答えを導き出していませんか?
経験則で判断していた仕事について、実際に確認したデータ、比較した案、判断条件を整理してみましょう。関連する科学的手法を調べたら、実務とどこが共通し、どこが異なるかを比較します。後から知った手法を、当時実施したことに置き換えてはいけません。実際の経験と、今なら改善できることを分けると、業務経歴の整理にもつながります。
キーワード学習の段階でここまで理解できればベストですが、実際はなかなか難しいと思います。まずは、これまでの業務や日々の業務を「論文のネタにならないかなあ」という視点で見ることから始めていただければ十分です。
数を増やす前に、数個を答案で使ってみる
最初は過去問1問から3〜5個ほどを選び、意味と使い方を確認してみましょう。これは取りかかる量の例です。以前示した30〜50個という数も必須の目標ではありません。答案を書いて見つかった不足を足していくと、調べる目的がはっきりします。
キーワードまとめは、キーワード同士のつながりを意識して行う
キーワードを調べたら、次の項目のうちその用語に必要な内容をまとめます。200〜300字の説明文は練習として使えますが、出典や適用条件まで無理に収める必要はありません。
- キーワードの内容
- 概要とメリットやデメリットについてまとめる
- 実用上の注意点
- 経験を踏まえて、注意しなければならないことを挙げる
- 課題
- キーワード上の問題点があれば、その解決の方向性について、例えば、人口減少というテーマに対しての課題を考える。
- 今後の展望
- 今後について白書や業界専門誌などを参考にまとめる。
キーワードまとめの例
キーワード:FMEA
FMEAは、対象やプロセスがどのように機能を果たせなくなるか、その影響を系統的に整理し、必要な対処を検討するための手法です。原因の検討や、対処の優先順位付けに用いることもあります。出典:IEC 60812:2018の公開概要。ここでは用語の概要を示しており、実施手順全体の解説ではありません。
用語の説明に加えて、下のような「答案に戻すメモ」を作ってみましょう。FMEAの欄は学習用の記入例で、実在の業務実績や模範解答ではありません。
| メモすること | FMEAを調べる場合の記入例 |
|---|---|
| 使いたい場面 | 設計時に想定される不具合と影響を整理する対策として検討する。 |
| 前提・確認する情報 | 対象の機能、使用条件、故障や影響に関する情報を確認する。 |
| 注意点 | 資料を確認した範囲と不明な点を分け、手法名だけで対策が完了したと書かない。 |
| 答案に戻す問い | 今回の課題に対して、何を対象に、何を確認し、結果をどう対処へつなげるか。 |
| 出典・確認日 | 参照した規格・資料の名称、該当箇所、確認した日付を残す。 |
また、抽出したキーワードをすべてまとめる必要はありません、分からないキーワードや改めて整理が必要なキーワードだけまとめて次のステップに進んで良いです。
分かりやすく書くことや経験を踏まえて書くことが大切ですが、筆者が特に意識してほしいことは、キーワード同士のつながりです。
関連付けるときは、流行の用語を増やすより、課題 → 対策に使う技術 → 適用条件 → 効果・注意点の順でつなぎます。例えば上のFMEAなら、「不具合を減らす」という課題に対し、何を分析し、その結果を設計や確認作業にどう反映するかまで考えます。
専門用語を多く書くこと自体が目的ではありません。問題の条件に対してその用語を使う理由を説明できないときは、適用条件を調べるか、別の対策を検討してください。
筆者は、ある程度キーワード抽出が終わったところでキーワードのマインドマップを作成することでキーワード同士の関連性を整理しました。
「手書き」か「デジタル」かは、繰り返し見返せるほうを選ぶ
手書きでもデジタルでも、更新しやすく、必要なときに確認できる方法を選びます。見返すだけでなく、資料を閉じて「何に使うか・条件は何か」を説明し、過去問の短い段落に使ってみましょう。
キーワード集に便利なアイテムはある?
ノートや表計算ソフト、単語帳アプリなど、自分が更新しやすい道具で十分です。下はAnkilotを使った2024年の共有例です。共有内容は作成者の学習メモなので、年度・部門・根拠を自分でも確認し、そのまま正解として暗記しないようにしてください。
技術士(機械部門)のキーワード学習として、「Ankilot」という単語帳作成サービスを利用してコツコツとキーワードを登録してました。キーワードがようやく100個になったので共有します。今後も追加していきます。https://t.co/k2cTpsgRJd
— つねぞう (@makino_fan) February 11, 2024
抽出キーワードのサンプル
下記は機械部門(機械設計)のキーワード抽出サンプルです。過去の学習資料であり、最新年度の出題予想や必要範囲の一覧ではありません。抜けや古くなった内容がないかを、自分の部門の最新の資料で補って使ってください。
キーワードは主に過去問題(H26からR5)及び製造基盤白書(ものづくり白書)から抽出しました。簡単なエクセルですがお問い合わせからご連絡いただければエクセルシートを差し上げます。
まず1問で「調べる→書く→直す」を試す
- 過去問を1問選び、問われていることを箇条書きにする。
- 足りない用語を数個調べ、意味・条件・注意点・出典をメモする。
- その知識を使って、短い段落または骨子を書く。
- 問題の条件に合わない説明や、根拠がない部分を直す。
書き始められないときは、さらに用語を集める前に骨子練習と解答ネタ整理で段落の役割を決めましょう。答案ができたら添削・推敲の確認ポイントへ進みます。学習の順番を見直したいときは12ステップの全体計画に戻れます。
説明の正確さや答案の改善点を一人で判断しにくい場合は、通信講座の比較で質問対応や添削の範囲を確認してください。有料サービスを使うかどうかは、必要な支援と予算に合わせて選べます。
