技術士二次試験の申込書類で迷いやすいのが、業務経歴に何を書くか、720字の「業務内容の詳細」にどの経験を選ぶかです。自分が担当した仕事と判断を、専門外の人にも伝わる形に整理しましょう。
本記事では、受験部門・選択科目の確認、業務経歴の整理、業務内容の詳細の書き方、提出前の確認を順に解説します。下書きに使える構成例と確認リストも用意しました。
総合技術監理部門を除く技術部門を主な対象としています。制度・様式は2026年8月31日に令和8年度の公式案内を確認しました。本文の整理方法は筆者の提案です。申込みには受験年度の公式案内・様式を使ってください。
すでに書類を提出した方は書き直しではなく、提出した控えを使って口頭試験の準備へ。筆記試験が終わった方は再現答案と口頭準備ノートから整理できます。
「技術士二次試験申込書類」とは
ここでは「受験申込書」と「実務経験証明書」の記載を扱います。提出物はこの2つだけではありません。写真、受験手数料に関する書類、受験資格を確認する書類など、申込方法・受験資格に応じた必要物を受験申込み案内で確認します。
受験申込書では部門・科目・専門事項を、実務経験証明書では経験期間と業務の内容を整理します。まず経歴を事実に沿って書き出し、両方の書類に矛盾がないかを確認する順番がおすすめです。


上の画像は過去の紙様式を使った説明用です。現在の提出用紙ではありません。実際の記入・入力は、受験する年度・申込方法の案内に従ってください。
「受験申込書」の書き方|部門・科目と専門事項を確認
記入要領に沿って全項目を確認したうえで、特に技術部門・選択科目と「専門とする事項」を、業務経歴の内容と照らし合わせて検討します。
技術部門と選択科目
受験する技術部門・選択科目は、自分の実務との対応を確認して選びます。複数の候補がある場合は、受験申込み案内に掲載された部門・科目の内容と過去問題を読み、自分の専門性をどの範囲で説明できるかを比較しましょう。将来の仕事での活用も考えますが、答えやすそうという印象だけで決めないことが大切です。
専門とする事項
令和8年度の記入要領では、選択科目に対応した専門業務を30字以内で記載します。詳述する業務との対応を確認し、自分が扱う対象と技術の範囲が伝わる表現を選びましょう。出典:受験申込み案内(専門とする事項)。
- 広い分野名だけで終わらず、自分が専門とする対象・技術を説明できる表現にする。
- 業務内容の詳細では専門とする事項を踏まえた内容にする必要がある。
例えば「流体機器の設計」など、対象と技術の組合せで表す方法があります。ただしこれは書き方の例であり、その表現を選べば質問の範囲が限定されるという意味ではありません。実際の専門と一致するかを確認してください。
名称を広く書けば必要な経験年数を満たせるわけではありません。経験期間と業務の該当性は、受験資格ごとの条件に沿って別に確認します。複数分野の経験の扱いなど判断に迷う場合は、日本技術士会の試験・登録部に確認してください。
「実務経験証明書」の書き方<業務経歴>
業務経歴は、選択した受験資格を満たす期間を確認できるように記載します。一般の技術部門では、技術士補としての補助業務、要件を満たす監督者の下での業務、その他の科学技術に関する業務で条件が異なり、必要期間は原則として「4年を超える」または「7年を超える」です。大学院での研究期間の扱いなど例外もあるため、単に「4年・7年以上」と読み替えず、公式の受験資格を確認してください。
記載すべき業務について
受験資格に該当する科学技術上の業務について、自分が何を担当したか、どのような技術的判断を行ったかを整理します。「大きなプロジェクトだった」という規模だけでなく、自分の役割を伝えることが重要です。
計画・研究・設計・分析・試験・評価やその指導など、実際に行った業務を具体的に書きます。例えば「○○設備の設計」だけでなく、対象、目的、自分の担当範囲が読み取れる表現にしましょう。業務名に特定の言葉を付けるだけで受験資格を満たすわけではありません。
記載した業務経歴の中から、専門とする事項に関連する1つの業務を「業務内容の詳細」で説明します。複数の仕事をつなぎ合わせるより、目的から判断、成果までを一貫して説明できる事例を選びましょう。
業務経歴の書き方のポイント
具体的かつ簡潔に書く
各経歴は、対象・担当した仕事・自分の役割が分かるように書きます。社内だけで通じる製品名や略語は補足し、「何をしたのか」が読み取れるかを点検してください。
すべての作業を並べる必要はありません。所定の欄で伝わる範囲に絞り、詳しい背景や判断理由は別のメモに残しておくと、口頭試験の準備にも使えます。
書き終えたら、第三者が読んでも自分の役割を区別できるかを確認しましょう。
職名だけでなく、技術的な仕事の内容を書く
「担当者」「管理職」などの職名だけでは業務の内容が伝わりません。設計条件の設定、試験結果の分析、技術的な指導など、実際に担当した内容を示します。
役割や判断の変化を、事実で伝える
業務経歴は所定の欄に収めます。実績を大きく見せるために件数を増やすのではなく、受験資格を満たす期間と主な業務が分かるよう整理しましょう。期間を重複計上せず、省略した期間の扱いにも注意が必要です。出典:受験申込み案内(業務経歴)。
若手の頃に担当した範囲と、その後に任された判断・調整の範囲を区別すると、経験の積み重ねが伝わります。事実より高度な役割を「演出」する必要はありません。
上司の下で行った仕事は、自分で検討したこと、上司が決めたこと、助言を受けて改善したことを分けて書きましょう。
管理・指導の仕事では、自分が行った技術的判断や指導と、部下・他部署の成果を区別します。自分の責任範囲と、どの判断で成果に関わったのかを具体的に説明できるようにします。
受験する部門や選択科目に合う業務であるか確認する
受験部門・選択科目と、業務に使った専門技術のつながりを確認します。名称だけでは対応が分かりにくい場合は、扱った対象や技術的な検討内容を補いましょう。区分の確認には、受験年度の部門・選択科目一覧を使います。
「実務経験証明書」の書き方<業務内容の詳細>
令和8年度の記入要領では、選んだ1つの業務について720字以内・図表不可・半角文字も1字でまとめます。目的、自分の立場・役割、技術的内容・課題、成果などを、専門とする事項を踏まえて整理します。出典:受験申込み案内(業務内容の詳細)。
最初から720字に圧縮せず、まず事実を箇条書きにし、読み手に必要な内容を選ぶと進めやすくなります。
業務内容の詳細に詳述する業務の選び方
詳述する業務は、専門との対応に加えて、次の2点を目安に比較してみてください。これは事例選びの考え方であり、合否を保証する条件ではありません。
- 課題解決ストーリーのわかりやすさ
- 制約や選択肢の中で、自分の判断を説明できる
課題解決ストーリーのわかりやすさ
業務の規模や苦労の大きさよりも、何が問題で、自分が何を考え、どう解決したかを説明できる事例を選びましょう。背景説明が長くなる場合は、対象を絞ると自分の判断に字数を使えます。
制約・選択肢・判断の根拠を整理する
例えば、性能と費用の両立、納期と試験範囲の調整、前例のない条件への対応などです。何と何が両立しにくく、どの案をどんな根拠で選んだかを、実際の経験に沿って整理します。
下記は問題解決の過程を書き出すための整理順です。公式の指定見出しではありません。自分の経験に当てはめ、必要な部分を下書きに使ってください。
- 目標設定(要求事項と責任の明確化)
- 現状把握(現状の調査やデータの収集)
- 問題分析(現状分析と原因特定)
- 課題設定(解決方針の設定)
- 対策立案(比較検討し解決策の提案)
- 実施結果(実施結果の成果)
- 結果評価(効果の検証と改善策の提案)
各項目に「チームがしたこと」だけでなく、自分の判断や行動が書けるかを確認します。実施していない手順は付け足さず、結果の限界や残った課題も整理しておきましょう。
業務内容の詳細の具体的な書き方(テンプレあり)
構成の一例は、目的 → 立場と役割 → 技術的内容・課題と対応 → 成果・評価です。公式案内に挙げられた内容を整理するための型であり、この順序の見出しが必須という意味ではありません。
文章へ落とし込む手順とNG例は、720字の「業務内容の詳細」を作る方法で具体的に解説しています。
参考テンプレート
下の画像は筆者作成の構成例です。提出用の公式様式や模範解答ではありません。読みづらい場合は画像を拡大し、各欄を自分の業務の事実で置き換えてください。

業務内容の詳細の留意点
コンピテンシーを意識する
令和8年度の口頭試験(総合技術監理部門を除く)は、次の4区分でそれぞれ60%以上が合否決定基準です。出典:技術士試験合否決定基準。
- マネジメント・評価
- コミュニケーション・リーダーシップ
- 技術者倫理
- 継続研さん
「業務内容の詳細」に全項目を詰め込む必要はありませんが、倫理や継続研さんを業務と無関係なものと切り離さないことが大切です。本文に収まらない事実は、口頭試験の回答メモとして整理しましょう。全体の考え方は技術士のコンピテンシーで確認できます。
コミュニケーション・リーダーシップ
業務の実施に当たっては、関係者とのコミュニケーションによるリスク調整が必要です。また、リスク調整には、リーダーシップが求められます。業務内容の詳細では、協議・説明・調整・提案・了承などのコミュニケーションを表す言葉を用いて、どんな関係者と何をどのように調整したかを明確に書くようにします。
評価・マネジメント
時間・人員・設備・費用などの制約に対して、どの資源をどう配分したかを整理します。「マネジメントを行った」と書くだけでなく、要求や制約、自分の判断を具体化しましょう。
業務内容の詳細では、「○○(資源)の制約がある状況で、〇〇が有効と判断して〇〇を提案した」、「業務の成果を〇〇と評価している・改善していく」等の表現を用いて、評価・マネジメントのコンピテンシーが伝わるように書きます。
時期よりも、自分の判断を具体的に説明できる業務を選ぶ
比較的新しい仕事は記憶や資料を確認しやすい一方、最新という理由だけで選ぶ必要はありません。専門との対応、自分の役割、判断理由、成果と改善点を説明できるかで比較します。守秘義務がある情報は、開示できる範囲を確認してください。
自分で点検し、必要に応じて第三者にも確認を頼む
まずは、自分の役割と技術的判断が文章だけで伝わるかを読み直します。そのうえで、業務の背景を知らない第三者に確認してもらうと、説明不足に気付きやすくなります。有料添削は必須ではありません。提出前の見直しに使える観点は添削・推敲の進め方も参考にしてください。
提出前に確認すること
内容を整えたら、記入要領と照合して形式・事実・添付書類を点検します。下記は確認用の補助リストであり、公式の提出物一覧に代わるものではありません。
- 受験資格に応じた業務の条件と必要期間を満たしているか。
- 業務期間に重複や記入漏れがなく、証明内容と一致しているか。
- 部門・選択科目・専門とする事項・詳述する業務に矛盾がないか。
- 会社やチームの成果と、自分の担当・判断を区別できているか。
- 業務内容の詳細の字数、様式、証明・写真などの必要物を確認したか。
- 守秘義務に触れる名称・数値などを記載していないか。
- 提出した内容と同じ控えを、添付書類も含めて保存したか。
提出後に自由に書き直せるものではありません。令和8年度の案内では、業務経歴・業務内容の詳細の追加・訂正はできないとされています。提出前に十分確認し、提出後に誤りに気付いたときは自己判断で差し替えず、日本技術士会の案内・問い合わせ先を確認してください。
書類を整えたら、次の準備へ
申込書類は、受験資格を確認するための書類であり、口頭試験で実際の業務を説明する土台にもなります。提出した控えと補足メモを分けて保管し、事実に基づいて説明できる状態にしておきましょう。
- 筆記対策をこれから組み立てる:論文対策12ステップの学習計画
- 筆記試験を終えて記憶を整理する:再現答案と口頭準備ノート
- 業務経験を話す練習に進む:口頭試験の概要・準備・想定質問
第三者の指導を受けたい場合は、申込書の確認や口頭対策が対象に含まれるかを、通信講座の比較記事と各サービスの案内で確認してください。
