本連載記事では、約6カ月の勉強期間で、技術士2次試験(筆記)に合格するためにやるべきことをまとめています。

今回は第6ステップ「論文作成(選択Ⅲ)」です。第4ステップで選んだ問題を例に、設問の読み取りから骨子、答案への展開を示します。
選択Ⅲの論文作成例
社会の連携が分断されるリスクを想定し、機械設計の立場からレジリエントな設計活動を考える問題を扱います。感染症、地政学的な不安定さ、サイバー攻撃、自然災害などが例示されていますが、答案では想定するリスクを一つ定めてから論じます。
問題
令和7年度 機械部門(機械設計)選択科目Ⅲ-1(日本技術士会の過去問題)
現代社会は、ヒトやモノが地球規模で緊密な連携を保ちながら発展を遂げている。この状況下で、感染症のまん延,地政学的不安定,データセンタへの攻撃や大規模自然災害など何らかの理由で連携が分断されると、機能回復まで多大な時間を要する可能性がある。このような状況下であっても、機械設計の技術者には社会に製品を供給し続けるレジリエントな設計活動が求められる。これらのことを考慮して、機械設計の技術者の立場で、以下の問いに答えよ。
(1) 長期にわたって社会の連携が分断されるリスクを1つ想定したうえで、レジリエントな設計活動を実現するための技術課題を多面的な観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、技術課題の内容を示せ。
(2) 抽出した技術課題のうち最も重要と考えるものを1つ挙げ,最も重要と考えた理由とその技術課題に対する複数の解決策を示せ。
(3) すべての解決策を実行しても新たに生じるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
骨子表作成
選択Ⅲの解答は、骨子をしっかり作ってから書き始めましょう。

下図は、骨子を作る過程での検討フローです。

実際に論文に書くのは「技術課題の設定」以降ですが、どのような検討に基づいて課題が設定されたのかを明確にしておくべきです。問題によっては「ゴールの設定」や「技術的な目標設定」あたりまでは問題文中で語られていたりします。フローを参考に骨子を作っていけるようにしましょう。
解答例
骨子を基に作成した解答が下記になります。

参考)解答テンプレート
以下は、今回の設問構成を踏まえた答案の型です。設問や受験部門が変われば、見出しと分量を調整してください。



大切なのは、各設問への答えと技術的な根拠です。型は書き漏れを防ぐために使い、内容を無理に当てはめないようにしましょう。設問ごとの分量も、求められる説明量に応じて調整します。
筆者は、下図のように各設問に対応する見出しを先に書き、書くべき要素を確認しながら答案を組み立てています。見出しを先に置く方法は一案です。時間配分や設問への対応を確認し、自分に合うやり方を練習で選んでください。

テンプレートを実際の3枚にどう割り付けるかは、令和8年度の公式問題を使った選択科目Ⅲの75行・1,800字の答案設計(無料)で、設問ごとの分量と段落の作り方を確認できます。
対応するコンピテンシーの確認
筆記試験の選択科目Ⅲでは、「専門的学識」「問題解決」「評価」「コミュニケーション」を意識して答案を組み立てます。
この選択科目Ⅲの答案では、選択科目に即した専門技術を使い、なぜその課題や解決策を選ぶのか根拠を示しましょう。コンピテンシー全体の「専門的学識」を、部門の知識を含まないものと捉える必要はありません。
今回の設問(3)では、解決策を実行しても残るリスクと対策を問われます。必須科目Ⅰとの記述量の優劣を決めるのではなく、この設問に必要な具体性を確保しましょう。製造業のリスクを考える手がかりとして、ものづくり白書に挙げられた要因も参照できます。白書の図をそのまま答案に写すのではなく、自分が想定した分断リスクと設計上の課題に結び付けてください。
2023年版ものづくり白書 P144

書いた答案を改善するヒント
最後に、書いた答案の改善点を見つける方法を紹介します。
自分で見直し、必要に応じて添削を受ける
令和8年度の合否判定基準では、筆記試験の選択科目は60%以上が基準と公表されています。一方、設問ごとの配点や個別答案の採点内訳までは示されていません。答案の点数を推測するより、設問への対応、技術的根拠、リスクと対策のつながりを確かめましょう(文部科学省の令和8年度合否判定基準)。確認の方法は次の二つです。
- 公式の過去問題と設問要求に照らして、自分の答案を確認する
- 必要に応じて、技術士や指導者など第三者の意見を聞く
過去問題の分析はステップ2の「過去問題分析」で扱いました。自分で見直しても判断に迷う点があれば、第三者の添削を利用する方法があります。添削では、設問の読み違い、根拠の不足、論理の飛躍を具体的に指摘してもらえるかを確認しましょう。依頼先を選ぶ際は、次の点を見ます。
- 自分の受験部門・選択科目や、最新の公式問題を踏まえているか
- 修正箇所だけでなく、設問とのずれや修正理由を具体的に説明してくれるか
まず自分で答案を読み返し、設問(1)の三つの課題が異なる観点か、設問(2)の解決策が最重要課題と結び付くか、設問(3)のリスクと対策が具体的かを確認します。そのうえで、改善点が見えにくいときに添削を利用するとよいでしょう。添削は合格の必須条件ではなく、答案を改善するための選択肢です。
社内の先輩技術士、個人の添削者、講座の指導者にはそれぞれ得意な領域があります。企業か個人かだけで質を決めず、専門の適合、指摘の具体性、回答までの時間、費用を比べて選びましょう。複数の意見が食い違う場合は、公式問題の設問要求に立ち返ります。
添削を受けた後は、指摘どおりに直して終えるのではなく、なぜ直すのかを理解し、次の答案でも同じ観点を使えるか確かめてください。自分で設問と答案を照合できることが大切です。
添削を利用する場合の確認方法やサービス選びは「技術士二次試験の論文添削」をご覧ください。有料講座も含めて比較したい方は「試験対策講座の比較」も参考にしてください。
生成AIは答案作成ではなく、抜け漏れや論理の確認に使う

生成AIは、自分で作った骨子や答案の抜け漏れ、論理の飛躍を確認する補助として使います。最初から答案を作らせるのではなく、まず自分の経験と知識で骨子を作ってから確認を依頼しましょう。
次のプロンプトに問題文と自分の骨子または答案を入れると、確認する観点を整理できます。
あなたは、技術士第二次試験の答案を確認するレビュアーです。以下の問題文と、私が作成した骨子または答案を確認してください。
#確認してほしいこと
1. 問われている内容に答えていない箇所
2. 技術的な根拠が不足している箇所
3. 前提・課題・対策・効果のつながりに飛躍がある箇所
4. 表現が曖昧で、具体化した方がよい箇所
#制約
・完成答案の代筆はせず、修正すべき点を質問形式で示す
・入力内容にない経験や事実を追加しない
・不確かな内容は、不確かであると明示する
#問題文
(問題文を貼り付ける)
#骨子または答案
(自分で作成した内容を貼り付ける)
生成AIの出力には誤りが含まれる可能性があります。技術的な内容は一次資料や自分の専門知識で確認し、会社名、顧客名、未公開の製品仕様、社内資料などの機密情報は入力しないでください。
最後に|骨子をマスターする
本日は、論文作成(選択Ⅲ)について解説しました。今回の解答例は、成績通知で選択科目がA評価だった受験者が、試験後に復元した答案です。実際に提出した答案と完全に一致するとは限らず、この答案単独の採点結果を示すものでもありません。
予想した問題がそのまま出るとは限らず、この受験例でも当日は限られた時間で4問の答案を書きます。今回の復元答案を「最低限の合格水準」と決めつけるのではなく、課題の絞り方、解決策のつなぎ方、残るリスクの示し方を学ぶ一例として使ってください。自分の受験部門の公式問題でも同じ手順を試しましょう。
では、ステップ7の「論文作成(必須Ⅰ)」に進みましょう。
注)本連載では、2次試験の中の論文対策のみについて触れています。「試験申込書の作成方法」や「口頭試験対策」、「試験対策講座の比較」についても別記事で解説していますのでよろしければ参考にしてください。
