技術士第二次試験の必須科目Ⅰと選択科目Ⅲは、どちらも課題を見いだし、解決方法とその遂行を論理的に説明する記述式試験です。ただし、対象とする技術の範囲が異なります。「必須は広く浅く、選択は狭く深く」とだけ覚えると、実際の設問で求められた具体性や視点を見落としかねません。
この記事は総合技術監理部門を除く技術部門を対象に、日本技術士会の令和8年度受験申込み案内で確認できる事実と、当サイト独自の答案練習法を分けて整理します。出題条件は受験する年度の公式案内と過去問題の原文を必ず確認してください。
必須Ⅰと選択Ⅲは何が違うのか
令和8年度の公式案内では、必須Ⅰは技術部門全般、選択Ⅲは選択科目に関わる問題を扱います。どちらも2問から1問を選んで解答し、答案用紙は600字×3枚です。必須Ⅰは40点・2時間、選択Ⅲは30点で、選択Ⅱと合わせた試験時間が3時間30分です。
| 比較項目 | 必須科目Ⅰ | 選択科目Ⅲ |
|---|---|---|
| 対象の軸 | 技術部門全般 | 選択科目に関わる専門分野 |
| 出題内容 | 部門全般の観点から多面的に課題を抽出し、解決方法と遂行の提案を問う | 選択科目の観点から課題を抽出・分析し、解決手法と遂行方策を問う |
| 評価項目 | 専門的学識、問題解決、評価、技術者倫理、コミュニケーション | 専門的学識、問題解決、評価、コミュニケーション |
| 出題・解答 | 2問から1問、600字×3枚、40点 | 2問から1問、600字×3枚、30点 |
| 試験時間 | 2時間 | 選択Ⅱと合わせて3時間30分 |
600字×3枚は答案用紙の形式です。1,800字を必ず埋める指定は、上記の公式案内には見当たりません。文字数だけでなく、各小問への回答と論理のつながりを優先します。また、選択Ⅲの評価項目に技術者倫理が独立して記載されていないことは、設問で求められる安全や社会への影響を無視してよいという意味ではありません。
科目の違いを答案にどう反映するか
まず設問の対象と動詞を拾う
問題文を読んだら、対象範囲、指定された立場、課題や解決策の数、そして「抽出」「選定」「提案」「評価」などの動詞に線を引きます。設問が一つの課題を選ぶよう求めていないのに毎回「最重要課題」を作る、という固定手順にはしません。見出しも小問の順序に合わせると、回答漏れを確かめやすくなります。
課題から評価まで一本の線でつなぐ
課題は背景の言い換えや技術名の列挙ではありません。目標と現状の差、差が生じる要因、解決のために取り組むことを分けます。解決策では、その課題に効く理由、適用条件、実施する順序と担当、効果の確かめ方までつなげます。最後に対策後も残る不確実性を挙げれば、本文の各部分が同じ問題を扱っているか点検できます。
架空の搬送ラインで骨子を比べる
以下は当サイト独自の架空例で、実際の試験問題・模範答案・採点基準ではありません。ある企業の複数工場で小型部品のトレー搬送ラインを改修するとします。製品切替時の誤搬送と短時間停止が増え、復旧時には作業者が設備の近くで作業します。一方、既設設備との接続と操業を止められる時間に制約があります。
| 考える点 | 必須Ⅰの骨子例 | 機械設計を選択した選択Ⅲの骨子例 |
|---|---|---|
| 問題の置き方 | 複数工場の安全・稼働・保全を両立する更新計画 | 既設機構と新しい排出・検出機構の取り合い |
| 課題の抽出 | 拠点間で異なる停止記録と安全手順、保全情報の共有不足を分ける | センサーの誤検出、トレー姿勢のばらつき、ガイド部の詰まりを切り分ける |
| 解決と遂行 | 共通の停止分類と更新優先順位を定め、各拠点で安全を確認しながら展開する | 搬送姿勢と検出位置を実測し、ガイド形状と検出条件を試験したうえで段階導入する |
| 評価と残る影響 | 停止時間、介入作業、保全負担を導入前後で比較する | 誤搬送率、詰まり頻度、復旧時の接近作業を同じ条件で比較する |
必須Ⅰでも「データを活用する」だけでは実行像が見えません。何を記録し、誰が判断し、どの順序で拠点へ適用するかが必要です。逆に選択Ⅲでも機構の寸法や部品名だけを並べず、作業者の安全や改修後の運用まで説明します。どちらの骨子を使う場合も、実際の設問が要求する項目に合わせて取捨選択してください。
リスク・波及効果・倫理の書き分け
対策の費用や工数があらかじめ見積もられているなら、それはまず実施上の制約です。一方、既設設備の状態が不明で改修費用や停止時間が見積りを超える可能性は、条件付きのリスクとして扱えます。「費用増はリスクにならない」と一律に除外せず、確定した負担と不確かな事象を区別します。
架空例なら、検出条件を厳しくした結果、良品まで排出される可能性が残るかもしれません。そこで誤検出率を試験し、手動復旧の手順と停止基準を決める、といった対応を示します。直接の効果は誤搬送の減少、波及効果は同じ停止記録の形式を他ラインに展開できること、と分けると筋道が明確になります。
必須Ⅰでは技術者倫理が公式の評価項目に含まれます。ただし「倫理は必ず250字」のような固定配分は公式の条件ではありません。公衆や作業者の安全、環境への影響を、自分が提案した解決策と設問の要求に結び付けて書きます。一般的な標語だけで終わらせないことが大切です。
提出前の答案チェック8項目
次の8項目は当サイトの自己点検用で、公式の採点表でも合格を保証する条件でもありません。問題文を横に置き、答案の該当箇所を指し示せるか確認してください。
- 設問との対応:各小問の動詞、指定数、条件に答えたか。
- 課題の観点:挙げた課題が同じ原因の言い換えになっていないか。
- 優先理由:一つ選ぶ指定がある場合、目標や制約に照らして選んだ理由を説明したか。
- 解決策の整合:提案が選んだ課題に効き、適用条件や実施順序を示したか。
- 効果の検証:何を変更前後で、どの条件で比べるか。
- 残るリスク:対策後の不確実性と低減・監視の方法を示したか。
- 倫理・持続可能性:設問が求める安全、社会、環境の観点を具体的判断に結び付けたか。
- 読みやすさ:見出し、主語、対象、数値の条件が追えるか。
これらに一律の行数や字数を割り当てる必要はありません。小問の要求と残り時間に応じて、足りない説明へ字数を回します。
公式問題で練習するときの順序
- 日本技術士会の過去問題から自分の受験部門・年度の原文を選び、指定条件を抜き出す。
- 答案を書く前に、課題・対策・検証・残る影響を一行ずつ結び付けた骨子を作る。
- 時間を測って手書きし、設問の動詞に対応する箇所と、根拠が薄い箇所を見直す。
骨子を全文へ展開する練習は、当サイトの全文作成と手書き練習も参考にしてください。同記事の速度や時間配分の数値例は練習用の仮定であり、公式の推奨配分ではありません。令和8年度の制度上の条件は受験申込み案内、資質能力の説明は日本技術士会のFAQで確認できます。