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実際に問題を解いてみる|機械部門 必須科目Ⅰ-2

2026 9/04
技術士試験 技術士論文例
2026年9月4日
実際に問題を解いてみる|機械部門 必須科目Ⅰ-2 人材流動化に強い設計・製造体制

令和8年度の技術士第二次試験・機械部門の必須科目Ⅰ-2では、転職などによる人材の流動化が進む中で、機械の設計・製造分野が直面する課題への対応が問われました。

人材流動化は、一見すると採用や人事制度の問題に見えます。しかし、機械部門の答案で中心に置くべきなのは、担当者が入れ替わっても、設計意図・安全性・品質を失わず、新しい知識を製品へ取り込める技術基盤をどう構築するかです。

この記事で確認できること

  • 人材の流動化を機械部門の技術課題へ変換する方法
  • 知識継承・力量・技術情報管理の3観点から課題を抽出する方法
  • MBD、PLM、モジュール化などを解決策へ落とし込む方法
  • 標準化やデジタル化によって新たに生じるリスクの考え方
  • 答案骨子から解答例へ展開する流れ

完成した解答を覚えるのではなく、「人が辞めること」を「設計品質を保つ仕組みの不足」へ言い換える過程に注目してください。

目次

令和8年度・機械部門 必須科目Ⅰ-2の要点

問題文は、終身雇用を前提とした形態から、人材の流出入が活発な雇用形態への転換を背景としています。新しい知識によるイノベーションや生産性向上が期待される一方、エンジニアや技能者の転職に伴う課題への対応を求めています。

確認項目答案に必要な内容
立場機械の設計・製造分野のエンジニア
背景人材の流出入が活発になり、知識や技能を持つ人が入れ替わる
課題異なる観点から3つ抽出し、それぞれの観点を明記
解決策最重要課題に対して複数提示し、専門技術・手法を使う
リスク解決策の実施後に新たに生じるものと対策を示す
留意点技術者倫理と社会の持続可能性の観点を含める

問題文の全文は、公益社団法人 日本技術士会の令和8年度 技術士第二次試験問題〔機械部門・必須科目〕で確認できます。必須科目ⅠはⅠ-1とⅠ-2から1問を選び、答案用紙3枚でまとめます。

最初に「守るもの」と「活かすもの」を決める

人材流動化を一律に悪いものとして扱うと、問題文にあるイノベーションや新たなスキル獲得の利点を無視してしまいます。答案では、次の2つを同時に成立させる考え方が必要です。

  • 守るもの:設計意図、安全性、品質、製造ノウハウ、機密情報
  • 活かすもの:新しく加わる人の経験、異分野の知識、デジタル技術、多様な視点

したがって問題を、「人材の移動を止めること」ではなく、人が入れ替わることを前提に、技術を組織へ残し、新しい能力を短期間で設計・製造へ接続することと定義します。

今回想定する設計・製造の状況

以下は、答案の考え方を具体化するための説明用の想定です。

  • 産業機械メーカーで、個別仕様を含む製品を設計・製造している
  • 開発途中で熟練設計者が転職し、中途採用者と外部協力会社が業務を引き継ぐ
  • 3D CAD、図面、計算書、設計審査記録が複数の場所に分散している
  • 強度余裕、安全対策、加工限界などの判断理由が担当者の経験に依存している
  • 転入者の経験分野と、任せる設計業務に必要な力量の対応が見えにくい

問題の定義
設計・製造の判断根拠が個人と分散ファイルに依存しており、人材の入れ替わりによって設計意図の断絶、力量不足の見落とし、技術情報の不適切な利用が生じ得る。

弱い答案になりやすい3つの書き方

採用・賃金・福利厚生だけを論じる

定着施策は大切ですが、それだけでは機械部門の専門性が伝わりません。人が入れ替わったときに、要求仕様、設計根拠、製造条件、安全性をどう維持するかまで展開します。

「マニュアルを整備する」で終わる

文書を増やしても、製品構成や設計変更と結び付かなければ更新されず、必要な場面で使えません。どの要求、部品、計算、審査結果と対応する情報かを追跡できる仕組みが必要です。

すべての情報を共有すればよいと考える

共有範囲を無制限に広げると、営業秘密や顧客情報の流出リスクが高まります。業務に必要な情報へ必要な期間だけアクセスできるよう、情報分類、権限、履歴を設計します。

人材流動化を3つの技術課題へ変換する

課題1|設計知識と判断根拠を追跡可能な形で継承する

技術継承と構成管理の観点から、要求仕様、設計モデル、計算結果、リスク評価、設計変更及び判断理由を製品情報と関連付け、人が替わっても再現・検証できる状態を作ることが課題です。

完成図面だけでは、採用しなかった案や安全率の根拠、加工・組立上の制約が伝わりません。暗黙知をすべて文章化するのではなく、後任者が設計判断をたどるために必要な情報を選び、最新版と承認状態を明確にする必要があります。

課題2|転入者の力量を可視化し、必要能力を早期に補う

能力開発と品質保証の観点から、担当業務に必要な知識・技能と転入者の経験を対応付け、不足する能力を実務と教育で計画的に補完することが課題です。

在籍年数や資格の有無だけでは、疲労強度計算、幾何公差、機械安全、加工法など、個別業務に必要な力量を判断できません。業務単位の力量基準、評価根拠、レビュー範囲を決め、任せられる範囲を段階的に広げます。

課題3|組織をまたぐ技術情報の利用を安全に管理する

情報セキュリティと知的財産の観点から、転入・転出者や外部協力会社が関わる環境で、必要な連携を妨げずに重要技術の漏えい、持込み、目的外利用を防ぐことが課題です。

図面や解析モデルには、形状だけでなく材料、許容値、製造条件、故障対策などの競争力の源泉が含まれます。情報の重要度と業務の必要性に応じて、閲覧・編集・出力の権限と期限を設定する必要があります。

最重要課題を選ぶ

最重要課題には、設計知識と判断根拠を追跡可能な形で継承することを選びます。

設計意図を失うと、転入者が十分な技能を持っていても、変更の影響範囲を判断できず、安全性・信頼性・製造性を損なうおそれがあります。一方、根拠を追跡できる技術基盤があれば、力量評価、教育、設計審査、外部連携にも同じ情報を活用できます。

解決策を機械部門の専門技術で考える

解決策1|MBDとPLMで設計情報を一元管理する

3Dモデルを形状表示だけでなく、製品製造情報(PMI)、材料、表面性状、幾何公差などを持つMBDとして整備します。要求仕様、部品表、強度計算、CAE結果、FMEA、設計審査記録及び変更履歴をPLM上で関連付けます。

各情報には版、作成者、承認者、有効範囲を持たせ、変更要求から影響分析、承認、出図までをワークフロー化します。これにより後任者は、「何が正しいか」だけでなく「なぜこの設計になったか」を追跡できます。

解決策2|モジュール化と設計ルールで引継ぎ範囲を明確にする

製品を機能単位へ分解し、モジュール間の荷重、精度、信号、エネルギー、取合寸法をインターフェース仕様として定義します。共通部品、標準ユニット、設計チェック項目を再利用可能なライブラリとして管理します。

新規性の低い領域は標準化し、固有の設計判断が必要な領域へ審査資源を集中します。設計変更時にはDRBFMなどを用い、変更点・変化点から故障モードと影響を確認します。これにより担当交代時の確認範囲を明確にし、見落としを減らします。

解決策3|力量表と段階レビューを製品開発へ組み込む

業務を、要求分析、機構設計、強度評価、安全設計、生産設計などに分解し、それぞれに必要な力量と到達基準を定義します。転入者の実績を具体的な成果物と行動で確認し、力量表とWBSを対応付けて担当範囲を決めます。

初期は既存設計の再計算、CAE結果の照合、標準モジュールの変更など、検証可能な課題から任せます。熟練者とのペアレビュー、設計審査の指摘履歴、試作・試験結果をフィードバックし、単独承認できる範囲を段階的に広げます。転入者の異分野知識は代替案レビューで活用し、標準へ取り込む前に性能とリスクを検証します。

解決策の実施後に生じる新たなリスク

MBD、PLM、設計標準を整備すると、既存モデルや過去の判断を無批判に再利用し、技術者が前提条件を確認しなくなるリスクが生じます。また、情報の集約によって、一度の不正アクセスや誤権限設定で重要技術が大量に流出する影響も大きくなります。

対策として、標準と解析モデルに適用条件、検証日、責任部署を設定し、材料・荷重・使用環境などの変化点がある場合は再計算とDRBFMを必須とします。例外設計を審査する経路を残し、標準化が新しい発想を妨げないようにします。

情報管理では、機密区分に応じた最小権限、期限付きアクセス、多要素認証、操作ログ及び出力制限を設けます。異動・退職・契約終了時は権限を速やかに見直し、定期監査とインシデント訓練によって運用の実効性を確認します。

技術者倫理と持続可能性の留意点

公衆の安全、健康及び福利を最優先し、担当者が交代しても安全性・信頼性に関する未解決事項を隠さず引き継ぎます。納期を理由に力量が確認できていない人へ承認責任を負わせず、技術者が懸念を報告できる経路を確保します。

力量評価は雇用形態、年齢、出身組織などではなく、業務に必要な能力と確認可能な実績に基づいて行い、評価目的を明示して個人情報を適切に扱います。転入者が前職の営業秘密を持ち込まないようにし、知識共有と秘密保持を両立させます。

社会の持続可能性の観点では、設計・製造だけでなく、保全、修理、再利用、廃棄まで技術情報を継承します。特定の熟練者へ教育負荷を集中させず、標準化と相互レビューによって長期的に知識を更新できる体制とします。

答案骨子をまとめる

項目記述する内容
前提熟練設計者の転出と中途人材・外部協力会社による引継ぎ
課題1技術継承・構成管理:設計知識と判断根拠の追跡
課題2能力開発・品質保証:力量の可視化と早期補完
課題3情報・知財:組織をまたぐ技術情報の安全な利用
最重要課題設計知識と判断根拠を追跡可能な形で継承する
解決策MBD・PLM、モジュール化・設計標準、力量表・段階レビュー
新たなリスク過去設計の無批判な再利用、標準化による硬直化、情報流出
対策適用条件と再検証、例外審査、最小権限、ログ、権限の期限管理
倫理・持続可能性安全優先、公正な力量評価、秘密保持、ライフサイクル知識の継承

解答例

1.多面的な観点からの技術課題

産業機械メーカーにおいて、熟練設計者の転出後、中途採用者と外部協力会社が個別仕様機の開発を引き継ぐ状況を想定する。図面や解析結果は存在するが、安全率、加工限界及び不採用案の判断理由が個人に依存している。

(1)技術継承・構成管理の観点:設計知識と判断根拠の追跡
第一の課題は、要求仕様、設計モデル、計算結果、リスク評価、設計変更及び判断理由を製品情報と関連付け、人が替わっても再現・検証できる状態を作ることである。完成図面だけでは設計意図を把握できず、不適切な変更が安全性や信頼性を損なう。

(2)能力開発・品質保証の観点:転入者の力量の可視化と補完
第二の課題は、担当業務に必要な知識・技能と転入者の経験を対応付け、不足能力を早期に補うことである。在籍年数だけでなく、機構設計、強度評価、機械安全、生産設計などの業務単位で力量を評価し、任せる範囲とレビュー方法を決める必要がある。

(3)情報セキュリティ・知的財産の観点:技術情報の安全な利用
第三の課題は、転入・転出者や外部協力会社との連携を維持しながら、重要技術の漏えい、持込み及び目的外利用を防ぐことである。図面、材料、許容値、製造条件等を重要度と業務上の必要性に応じて管理する必要がある。

2.最重要課題と複数の解決策

最重要課題は、設計知識と判断根拠の追跡である。設計意図を失えば、技能のある転入者でも変更の影響範囲を判断できない。一方、追跡可能な技術基盤は、教育、設計審査及び外部連携にも利用できる。

第一に、3DモデルへPMI、材料、幾何公差等を付与するMBDを導入する。要求仕様、部品表、強度計算、CAE結果、FMEA、設計審査記録及び変更履歴をPLMで関連付ける。版、承認状態及び適用範囲を管理し、変更要求から影響分析、承認、出図までをワークフロー化する。

第二に、製品を機能単位へモジュール化し、荷重、精度、信号、エネルギー及び取合寸法をインターフェース仕様として定義する。共通部品と設計チェックをライブラリ化し、変更時はDRBFMにより変化点から故障モードと影響を確認する。これにより引継ぎ時の確認範囲を明確にする。

第三に、要求分析、機構設計、強度評価、安全設計及び生産設計ごとに力量基準を定義し、力量表とWBSを対応付ける。初期は再計算や標準モジュール変更など検証可能な業務から任せ、ペアレビュー、試作・試験結果及び審査指摘をフィードバックして、単独承認範囲を段階的に広げる。

3.新たに生じるリスクと対策

設計情報と標準を集約すると、過去モデルを無批判に再利用し、材料、荷重又は使用環境の違いを見逃すリスクが生じる。また、標準化により設計が硬直化し、新しい発想を排除するおそれがある。さらに、誤権限設定や不正アクセスによる技術情報流出の影響が拡大する。

標準と解析モデルに適用条件、検証日及び責任部署を設定し、変化点がある場合は再計算とDRBFMを必須とする。例外設計の審査経路を設け、新技術は試作と性能・リスク評価後に標準へ反映する。情報は機密区分に応じて最小権限、期限付きアクセス、多要素認証、操作ログ及び出力制限を適用し、異動・退職時に権限を見直す。

4.技術者倫理と社会の持続可能性

公衆の安全、健康及び福利を最優先し、担当交代時も安全上の未解決事項を明示して引き継ぐ。力量未確認者へ納期を理由に承認責任を負わせない。力量評価は雇用形態等ではなく業務に必要な能力と実績に基づき、個人情報を目的外利用しない。転入者が前職の営業秘密を持ち込まないよう確認する。また、保全、修理、再利用及び廃棄まで技術情報を継承し、製品ライフサイクル全体で安全と資源効率を維持する。

解答例について
これは一つの考え方です。実際の答案では、自身が扱う製品、組織規模、設計プロセス及び専門分野へ置き換えてください。専門用語は並べるだけでなく、どの情報を、どの工程で、どの状態にするかまで説明します。

答案を提出する前の自己点検

  • 人材流動化の利点と課題の両方を踏まえたか
  • 採用や待遇だけでなく、設計・製造上の技術課題に変換したか
  • 3つの課題に異なる観点を明記したか
  • 設計意図、力量、技術情報のうち何を管理するか具体的にしたか
  • MBDやPLMなどの技術名を、目的と運用方法まで説明したか
  • 新たなリスクが解決策の実施後に生じるものになっているか
  • 公衆安全、公正な力量評価、秘密保持を倫理面で扱ったか
  • 保全・再利用・廃棄まで含めて持続可能性を考えたか

まとめ

人材流動化を扱う答案では、「人を引き留める」だけではなく、人が入れ替わっても技術が失われず、新しい知識を安全に活かせる仕組みを示す必要があります。

  1. 守る技術と活かす新しい能力を明確にする
  2. 設計知識、力量、情報管理の観点から課題を抽出する
  3. MBD・PLM・モジュール化・段階レビューを具体的に使う
  4. 再利用の過信、硬直化、技術流出を新たなリスクとして評価する
  5. 安全、公正、秘密保持、ライフサイクルの継続性を確認する

まずは自分の職場で担当者が交代した場面を一つ選び、「失われると困る設計判断」と「新しい担当者に確認すべき力量」を書き出してみてください。

前回の「実際に問題を解いてみる」を読む
必須科目Ⅰの論文の作り方を見る
技術士コンピテンシーを確認する
論文添削について確認する

独学だけでは答案の方向性を判断しにくい場合は、補助的な選択肢として技術士試験対策講座の比較も参考にしてください。

参考資料

  • 公益社団法人 日本技術士会「令和8年度 技術士第二次試験問題〔機械部門〕」
  • 経済産業省ほか「2026年版ものづくり白書」
  • 厚生労働省「職業能力評価基準」
  • 経済産業省「技術流出対策ガイダンス第2版」
技術士試験 技術士論文例
  • 実際に問題を解いてみる|機械部門 必須科目Ⅰ-1

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