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2026年版環境白書を技術士試験にどう使うか|循環経済を部門横断で読み解く

2026 9/09
技術士試験
2026年9月9日

技術士第二次試験の論文では、環境問題を環境部門だけの論点として扱うことはできません。資源の調達、製品やインフラの長寿命化、再利用・再資源化、地域の防災まで、循環経済は多くの技術部門に関わるテーマです。

2026年版の環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書は、循環経済を単なる廃棄物対策ではなく、脱炭素、産業競争力、経済安全保障、地域活性化を同時に考える枠組みとして整理しています。本記事では、この視点を技術士試験の答案へ落とし込む方法を部門横断で解説します。

この記事で分かること

  • 2026年版環境白書で押さえたい循環経済の考え方
  • 長寿命化、再利用、再資源化を答案へ変換する手順
  • 建設、環境、衛生工学、機械など部門ごとの着眼点
  • 環境対策を「技術的な解決策」として書くための評価軸

※本記事は、2026年9月9日時点で公開されている環境省の資料を基に、技術士試験の学習への活用方法を筆者が整理したものです。特定テーマの出題を予測・保証するものではありません。

目次

2026年版環境白書の中心は「循環経済」

令和8年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の第1部は、「循環経済(サーキュラーエコノミー)で日本列島を強く豊かに」をテーマとしています。環境省は循環経済を、資源投入と消費を抑え、廃棄物や環境負荷を減らしながら、サービス化などを通じて付加価値を生み出す経済活動と説明しています。

ここで重要なのは、循環経済が「ごみを減らす」だけではないことです。白書では、気候変動、生物多様性、地域活性化、暮らしの質、産業競争力、経済安全保障といった複数の政策課題の同時解決に資する取組として位置付けられています。

環境省の2026年版白書を見る
循環経済の解説を読む

試験で使うなら、資源循環をライフサイクルで見る

循環経済を答案に使うときは、廃棄段階だけを切り取らず、調達、設計、製造、利用、保全、回収、再資源化までを一つの流れとして捉えます。上流の設計条件を変えなければ、下流で分解しにくい、材質を判別できない、再生材の品質を保証できないといった問題が残るためです。

  1. 調達:希少資源や輸入依存度の高い材料を把握する
  2. 設計:長寿命化、修理、分解、材料識別を考慮する
  3. 製造:歩留まり、エネルギー、端材、化学物質を管理する
  4. 利用・保全:状態監視と予防保全で使用期間を延ばす
  5. 回収・再資源化:回収経路、選別精度、再生材の品質を確保する
  6. 評価:工程の一部だけでなく、ライフサイクル全体の効果を確認する

答案では「リサイクルを進める」で止めない。
誰が、どの段階で、何を識別・測定・判定し、品質や安全をどの指標で確認するのかまで書くと、具体性のある専門的な解決策として示しやすくなります。

白書から読み取れる3つの重要論点

1|資源確保と経済安全保障

国際的な資源獲得競争や供給網の不確実性が高まるなか、国内で回収した資源を安定して利用できる仕組みは、環境対策であると同時に、経済安全保障にも資する取組です。白書は、鉄スクラップの年間輸出量がおよそ770万トンであることや、プラスチックの約8割が熱回収を含む焼却や埋立て等に回っている状況を示しています。

答案では、供給源を増やすだけでなく、回収材の品質のばらつき、異物混入、トレーサビリティ、再生材を使った製品の信頼性まで扱います。資源を「集められること」と「要求性能を満たして使えること」は別の課題です。

2|長寿命化と適切な保全

製品や構造物を長く使うことは、新しい資源の投入量と廃棄量を抑える有効な方法です。ただし、長寿命化は単に交換時期を延ばすことではありません。劣化状態を把握し、安全性と機能を確認しながら、補修・更新の時期を最適化する必要があります。

センサーによる状態監視、点検データの標準化、劣化予測、交換可能なモジュール設計、補修部品の長期確保などを組み合わせます。延命によって故障リスクや保全費用が増えないか、予防保全による停止が過剰にならないかも評価対象です。

3|再利用・再資源化を前提にした設計

使用済み製品を回収しても、接着や複合材料によって分解できない、材質情報が残っていない、再生材の品質を評価する方法がない場合は、高度な循環利用につながりません。対策は回収設備の増強だけではなく、設計段階へ戻って考える必要があります。

  • 締結方法やモジュール構成を見直し、分解・交換しやすくする
  • 材料表示やデジタル情報を残し、材質と使用履歴を追跡できるようにする
  • 再生材の物性、ばらつき、耐久性を評価し、適用範囲を決める
  • 回収事業者、材料メーカー、製造者の間で品質基準を共有する
  • 安全、品質、コスト、環境負荷のトレードオフを確認する

循環経済を部門別の答案へ変換する

循環経済の論点を技術部門別の判断へ変換する図
部門扱いやすい課題答案で示したい判断
建設インフラ長寿命化、建設副産物、地域循環劣化度、優先順位、補修・更新、再生材の適用条件
環境資源循環、廃棄物、LCA、生物多様性物質フロー、環境負荷、二次影響、地域特性
衛生工学廃棄物処理、水・熱・資源の回収処理性能、安全衛生、エネルギー収支、安定運転
機械長寿命設計、修理性、分解性、再生材利用強度、耐久性、交換性、品質保証、フェイルセーフ
化学材料代替、分離・精製、ケミカルリサイクル純度、収率、反応条件、エネルギー、残渣処理
農業地域資源、農業バイオマス、土壌保全持続可能な収量、物流、地域受容性、土壌への影響
森林森林資源、木質バイオマス、森林保全持続可能な伐採・更新量、物流、地域受容性、生態系への影響
電気電子電池・電子機器、再生材利用、需給最適化安全回収、絶縁・性能、計測精度、フェイルセーフ
情報工学資源追跡、履歴管理、データ連携識別子、データ品質、アクセス管理、相互運用性

同じ「資源循環」というテーマでも、部門によって技術者が決める内容は異なります。環境部門なら物質フローと環境影響、機械部門なら分解性と耐久性、情報工学部門なら履歴データの品質と権限管理が中心になります。白書の言葉をそのまま書くのではなく、自分の部門で行う設計・計測・評価へ置き換えてください。

答案骨子に変える具体例

例として、「回収プラスチックの国内循環」を機械部門の設計課題へ変換します。

白書に示された現状プラスチックの約8割が熱回収を含む焼却や埋立て等に回り、再生に回されるものについても、国内利用量の約3倍が海外へ流出している。
問題資源を回収しても、材質の混在や履歴不足により、要求性能を満たす再生材を安定して確保できない。
原因製品が分解・選別を前提に設計されておらず、使用履歴と材料情報も再資源化工程へ引き継がれない。
技術課題製品の安全・耐久性を維持しながら、分解・材質識別を容易にし、再生材の品質を保証できる設計・評価体系を構築する。
解決策分解容易設計、材料表示と履歴管理、再生材の物性・耐久評価、適用部位の段階的拡大を行う。
評価回収率、再生材使用率、歩留まり、製品寿命、故障率、ライフサイクルの温室効果ガス排出量で確認する。
残存リスク異物混入による性能低下、情報管理負荷、回収輸送による環境負荷、コスト増加。

この骨子なら、環境対策の紹介ではなく、制約条件の下で設計と品質保証を成立させる技術的な論文になります。白書の1ページを答案骨子へ変える具体的な作業は、白書の1ページを答案ネタに変える方法でも実演します。

環境分野の答案で注意したい3つの落とし穴

環境に良いと決めつけない

回収、輸送、洗浄、分離、再処理にもエネルギーと資源が必要です。対策前後の評価範囲を決め、負荷が別の工程や地域へ移っていないかを確認します。

複数の目的を同時に追い過ぎない

循環経済は多くの政策課題と関係しますが、答案で全てを解決しようとすると論点がぼやけます。問題文の条件から最重要課題を選び、その課題に直接効く解決策を中心に書きます。

制度名だけで解決策にしない

法律、補助制度、認証の活用は実行条件を整える手段です。技術士の答案では、制度の活用に加えて、技術者が何を設計・測定・検証するのかまで示します。

効率よく学ぶための進め方

  1. 過去問から「資源」「長寿命化」「廃棄物」「脱炭素」に関係する1問を選ぶ
  2. 環境白書の目次から、問題に近い章を1つだけ読む
  3. 事実を1〜2点、出典と年度を付けてメモする
  4. 自分の部門で生じる問題、原因、技術課題へ置き換える
  5. 解決策、効果の指標、残存リスクまで短い骨子を作る
  6. 制限時間内に答案を書き、問題文の要求へ戻って確認する

白書を最初から最後まで読み切る必要はありません。必要な根拠が得られたら、答案作成へ戻ることが大切です。調べる資料の選び方は技術士論文のキーワード学習、課題と解決策のつなぎ方は技術士論文を書くときのポイントも参考にしてください。

まとめ

2026年版環境白書の循環経済は、環境部門に限らず、建設、衛生工学、機械、化学、農業、森林、電気電子、情報工学など多くの部門で活用できます。

答案では、資源循環を理念として述べるのではなく、ライフサイクルのどこに問題があり、どの専門技術で改善し、何を測って効果を確認するのかを明確にします。白書を根拠に使いながら、最後は自分の部門の設計・評価・運用へ落とし込んでください。

参考にした公的資料

  • 環境省|令和8年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書
  • 環境省|循環経済で日本列島を強く豊かに
  • 環境省|国内の資源循環をめぐる課題
  • 環境省|循環経済への移行に向けた取組
技術士試験
  • 2026年版ものづくり白書を技術士試験にどう使うか|AI・技能継承・経済安全保障を部門別に整理
  • 技術士論文の「問題」と「課題」は何が違う?|原因・目標・解決策まで一つの例で整理

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