- 機械設計が関連する職種の将来性を知りたい
- 機械設計者としての価値を磨くためにどうすればよいか知りたい
機械設計の仕事はどれくらい稼げるのか、今後も需要があるのか気になりますよね。
機械設計の平均年収は約550万円で全体平均の462万円と比較して高収入です。また、経産省によると今後も需要過多になる予測です。
しかし、業界の違いによる収入の差が大きかったり、新しい付加価値が求められたりと慎重にキャリアを検討する必要もありそうです。
本日は、機械設計の仕事の需要について検討し、付加価値の高い機械設計者になるにはどうすればいいかを解説します。
機械設計者の需要
2018年の経産省の資料「理工系人材需給状況に関する調査結果概要」から抜粋すると、5年後の2023年に全90分野の中で機械工学が最も人材の供給が不足する分野になっています。
上記のデータと次の理由から機械設計者の需要は今後も続くと考えられます。
機械設計者の人材供給が不足している理由
育成に時間がかかる
機械設計者の育成は、高度な技術と専門知識を学ぶため時間がかかります。学び始めから実践経験を伴うスキルを習得するまで、数年の時間と努力が必要になります。
ソフトウエア開発者などと比較すると、ソフトウエア開発者は1年程度の実践経験を伴う教育で一定の労働力になるが機械設計者については3年以上かかるというのが通説です。
理由として、現物での設計~試作(評価)サイクルにかかる時間がデータ上で完結するソフトウエア開発と比較して何倍もかかるためです。
機械技術者よりITエンジニア
近年、テクノロジー業界ではITエンジニアの需要が高まっています。
デジタル化の波が影響し、機械技術者よりもITスキルを持つ人材への需要が増加しているため理系就学者がIT系を選択することが多くなっているようです。
働き方に古い文化が残っている
機械設計の業界には、まだ年功序列や長時間労働といった古い文化が残っており、これが若手人材の入職を妨げる要因となっています。
経験や技術を伝えにくい
機械設計における経験や技術の伝承は容易ではありません。
高度な専門知識を持つベテラン技術者から若手への伝承には、時間と効果的なプログラムが必要です。
しかし、多くの組織では技術伝承にリソースを割く余裕はなく退職者とともに技術が失われます。技術の積み上げができないので業務の効率化による省人化も不可能です。
業務の複雑化
技術の進歩に伴い、機械設計者の業務範囲は広くなり複雑化しています。
この複雑さが、業務に必要な工数増加を招くとともに、新規参入者の学習障壁を高め、経験豊富な人材の育成と供給を一層困難にしています。
さらに機械設計者の需要が増す業界について
機械設計者の需要は、特にIoT、自動車(EV)産業、ロボット、FA、医療機器、そしてエネルギー産業で増加しています。
特に国内においては、高齢化社会における介護ロボットや医療ロボットの需要の増加に伴い、機械設計者の需要は長期的に増加します。
機械設計者はAIの進化で仕事がなくなる?
近年のAIの進化は目覚ましく一部の職種は人からAIに置き換えが進んでいます。
その観点で機械設計はどうなのか検討しておきましょう。
機械設計の仕事がAIに置き換えられる範囲
機械設計エンジニアの主な役割は、製品ができるまでの一連のステップを管理することです。この仕事には、顧客の要求を理解し、製品の仕様を決め、設計を行い、製造方法を考え、品質をチェックし、テストして、最終的には顧客サポートや製品のメンテナンスを行うことが含まれます。
AIは設計や開発の仕事をより簡単にし、スピードアップさせることができます。たとえば、AIは自動で設計図を描いたり、最も適した部品を選んだり、不良品を見つけ出したりするのに役立ちます。
これによって、人の手で時間をかけてやっていた作業をAIが素早く行い、仕事を効率化し、製品の品質を高めることができます。
機械設計の仕事がAIに置き換えられない範囲
しかし、AIにはできないこともあります。新しい製品のアイデアを考えることや、市場が何を求めているかを理解すること、詳細な設計を決めることなど、創造的で複雑な作業は人間のエンジニアが行う必要があります。AIはエンジニアを手伝う道具の一つであり、エンジニアの仕事を全て取って代わるものではありません。
機械設計者の年収
機械設計の需要が十分にあることはご理解いただけたでしょうか。
続いて、実際にどの程度の市場価値(≒収入)なのかを見てみましょう。
平均年収
機械設計の平均年収は以下の通りです。
全体の平均年収462万円に対して機械設計者の平均年収は549万円です。
また、企業規模に比例して収入が増加することも分かります。
業界による違い
若干、趣旨がずれますが個人の収入は「業界の生産性」違いによる影響が大きいので簡単に触れます。
「業界の生産性」とは、その業界が一人当たりどれだけの利益を出しているかということです。
この要素は、個人の努力ではなく現時点の業界の立ち位置で決まります。個人の能力が高くても業界の選択を間違ったら、年収は高くなりません。
同じ業界でも生産性が違う会社はいくらでもありますが、業界ごとにベースとなる相場は決まります。
例えば次の2社を比べてみると
大雑把な計算ですが、自動車業界と電機業界では5倍以上も生産性が異なります。
社員の平均年収が5倍異なるわけではありませんが、
業界の生産性は年収を大きく左右する要素です。
業界選びでは「生産性が高い業界」もしくは「これから成長する業界」を狙う必要があります。
トヨタやニデックが今後どうなるかの明確な予想は困難ですが、今後の成長が見込めないことが分かりやすい産業に進まないように気を付けることはできそうですね。
生産性が低く、成長が見込めない産業で働く限り年収を高めることは期待できません。
価値の高い機械設計者になるために
機械設計の分野で価値ある技術者になるためには、技術的スキルだけでなく、広い視野と柔軟性が必要です。ここでは、そのための具体的な検討項目を見ていきましょう。
デジタルトランスフォーメーションを知る
デジタルトランスフォーメーションは、製品設計から生産、運用に至るまで、あらゆるプロセスに革新をもたらします。
クラウドコンピューティング、ビッグデータ、AIなどの技術を活用して、効率化とイノベーションがどのように生じていくかを自身の専門業界を踏まえて調べてみましょう。
環境配慮について学ぶ
持続可能な開発は、現代の製品設計において重要な要素です。
リサイクル可能な材料の選定、エネルギー効率の高い設計、廃棄物の削減など、環境への影響を最小限に抑える設計手法について学びましょう。
機械分野以外の技術を身につける
機械設計者にとって、電子工学やソフトウェア開発など、隣接する技術分野の知識も重要です。
IoTデバイスやスマート工場など、複合技術が求められるプロジェクトでは、このような多岐にわたる技術スキルが競争力になります。
新しいツールを使いこなす
CADやCAEなどの設計ツールは日々進化しています。
最新のツールを使いこなすことで、より高度な設計が可能になり、作業効率も大幅に向上します。
また、これらのツールを活用することで、設計ミスの削減や開発速度向上にもつながります。
モノからコトへの価値転換を理解する
製品の価値は、その機能性だけでなく、提供する経験やサービスにも関わってきます。
例えば、製品データを活用したメンテナンスサービスの提供など、製品を通じて顧客に新たな価値を提供する方法について考えましょう。
最後に
本記事では、機械設計の仕事の需要について確認し、付加価値の高い機械設計者になるにはどうすればいいかを解説しました。
機械設計の平均年収は約550万円で経産省によると今後も需要過多になる予測ですが、業界の違いによる収入の差が大きかったり、新しい付加価値が求められたりと慎重なキャリア検討が必要なことが分かりました。
本記事を参考に、あなたらしい機械設計のキャリアを築いていただければとおもいます。
具体的な需要を知りたい場合は機械設計分野を得意とするエージェントに相談してみましょう(おすすめのエージェントはこちらの記事で紹介しています)
モノづくりは人類を豊かにした進化そのものであり、機械設計はモノづくりの根幹を担う仕事です。機械設計の仕事は今後も多様な価値観に対応しながら世界に貢献し続けるでしょう。