- 機械設計の仕事がどんなプロセスで行われるかについて知りたい
- 機械設計の仕事にはどんな種類や役割があるのか知りたい
本日は、機械設計者が行う業務や機械設計者のいろいろな働き方の種類について紹介します。この記事を読むことで、機械設計の仕事について具体的にイメージできるようになります。
機械設計の業務パターン
機械設計のジャンルの幅は広く、スマホやパソコンなどの精密機器系や産業機械・家電などの一般機械系、プラントなどの重工業系などと多岐にわたります。ですが、機械設計の主な業務のパターンはジャンルにかかわらず次の3つになります。
新開発設計 | 市場のマーケティングをもとに、新しい製品を設計する。 新製品開発などがこれにあたります。 |
改善設計 | 生産中の機械を改善し、より良い製品を設計する。 既存製品のマイナーチェンジなどがこれにあたります。 |
特注設計 | 顧客からの要求をもとに、機械を設計する。 受注製品のカスタマイズ開発設計などのがこれにあたります。 |
機械設計のプロセス
業務のパターンによって若干異なりますが機械設計がかかわるプロセスについてみましょう。
プロセスの流れ
各プロセスについて解説します。
マーケティング | 市場のニーズやトレンドを分析し、どのような製品が求められているかを調査します。基本は、営業や経営の業務範囲ですが、技術的な専門知識が求められることもあります。 |
顧客要求 | 顧客の要望や必要とする機能を明確にし、それを満たすための製品要件を定義します。基本は、営業や経営の業務範囲ですが、技術的な専門知識が求められる場合は営業とともに顧客との打ち合わせ等に参画します。 |
市場フィードバック | 既存製品に対する市場からの評価やフィードバックを収集し、改善点を識別します。市場からの要求や不具合の解析には、技術的な専門知識が求められます。 |
企画 | 製品のコンセプトや目的を決めます。市場のニーズを理解し、どのような製品が成功するかを検討する作業が含まれます。企画段階では、目標市場、製品の特徴、必要な機能、および実現可能性について慎重に考慮され、製品開発の方向性を定める基礎となります。 |
仕様検討 | 製品に求められる具体的な技術仕様や性能基準を決定し、設計方針を固めます。 |
構想設計 | 製品の基本概念やアイデアを考案し、全体の設計案を作成します。 |
詳細設計 | 構想設計をさらに詳細にして、具体的な寸法や材料、部品の選定などを行います。 |
製作(試作) | 設計に基づき、実際の製品や試作品を製造します。 |
評価 | 製作した製品や試作品を試験し、設計の妥当性や性能を検証します。 |
出荷 | 最終製品を生産し、市場に向けて出荷します。 |
量産化 | 製品を生産するための設計を行います。具体的には、製品の生産性や効率を考慮した設計修正や製造プロセスの設計を行います。 |
市場対応 | 製品の設置や立ち合い、不具合が発生した際の対応、その結果を受けての改善設計へのフィードバックを行います。 |
審議(DR:Design Review)は、各プロセス中に行われる重要な評価会議です。プロジェクトチームや関係者は、設計の進捗をチェックし、問題点を特定し、必要に応じて設計変更を加えます。目的は、製品が顧客の要求仕様、性能基準、安全基準、予算、および時間の枠内で適切に設計されていることを保証することです。審議は、設計資料や評価結果などの詳細な証拠に基づいて行われます。審議は、製品の品質を保証し、リスクを軽減し、最終的に顧客満足を実現するために不可欠です。
機械設計のプロセスに関わる職種
機械設計技術者がどのように各プロセスに携わるかについて解説します。業務範囲は、組織や案件毎に異なるため一概には言えませんが、イメージしやすいようにいくつかのポジションに分けて解説します。
プロジェクト全体を担当する
一番わかりやすいのがプロジェクト担当です。プロジェクト担当としてプロセスの最初から最後まで行うことになります。企画から関わった製品を市場対応(初期不具合が落ちつく頃)まで担当できるため自身の設計がどんな評価を受けるかを目の当たりにできるためやりがいがあります。反面、開発スケジュールによっては業務量が多くなったり、うけるプレッシャーも強くなりがちです。リーダーか担当かの職責次第ですが、設計外の業務も多いです。
特定プロセスを担当する9つのパターン
特定のプロセスを担当する職種として9つのパターンを紹介し解説します。
企画担当者
企画担当者は、製品開発の最初の段階で、市場調査や顧客ニーズの分析、製品コンセプトの提案を行います。企画担当者は、ビジョンを形成し、製品が市場に適合するように方向性を設定します。
具体的には、営業のマーケティング部門や組織の上層部とともに市場のニーズを分析し、それに対して技術的にどう対応するかを考えます。組織で保有していない技術が必要な場合は数年後を見越した開発の企画をしたり、外の組織との協力を計画したりします。自身で機械設計事態を行うことはありませんが、機械設計を含む広範な知識を求められます。
設計マネージャー・リーダー
設計マネージャーは、プロジェクトの設計フェーズ全体を監督します。チームのリーダーとして、スケジュールの管理、リソースの割り当て、設計プロセスの進行状況の監視を行い、品質基準が遵守されるよう指揮を執ります。
具体的には、企画されたプロジェクトの仕様検討から構想設計及び詳細設計までのプロセスを行います。自身でCADを用いて全体の構想設計を行う方もいればエクセルやパワポの資料を使い、設計担当となるメンバー(もしくは外部の設計会社)へ業務を展開します。機械設計の範囲のみ担当する場合もあれば電気やソフトウエアの範囲までを管理するポジションの場合もあります。
組織内の機械設計者としては花形といえます。自身で詳細設計や細かい計算を行うことは少ないですが全体の開発品質を確保する義務があるため製品の細部までの知識が必要です。また、関連部門との調整やDRでは先頭に立つためプレゼンテーション等の技術も必要です。
設計担当者、解析担当者
設計担当者は、具体的な製品の設計を行う機械設計者です。仕様にもとづいて、構想設計から始め詳細設計及び、評価までのプロセスを中心に行います。CADツールを使用して図面やモデルを作成し試作後は、試作品の評価等も行います。設計のみを行う設計受託会社も存在します。
解析担当者は、製品設計が要求された性能指標を満たすことを確かめるためのシミュレーションや解析を担当します。簡単な解析のみであれば設計者が解析までを行いますが、複雑な解析は解析担当者や解析受託会社に依頼されます。
生産技術担当者
生産技術者は、製品を効率的かつ経済的に生産するためのプロセスを設計します。生産技術者は、製造方法、工具、設備の選定を行い、生産ラインの最適化を図ります。
技術営業や保守保全技術者
技術営業は、製品の技術的な側面を理解し、その情報を顧客に伝え、販売を促進します。保守保全技術者は、製品が正常に機能し続けるようにメンテナンスや修理を行います。
品質保証担当者
品質保証担当者は、品質管理プロセスを管理し、製品が合格基準を満たすための評価や調査を行います。直接的に設計業務を行うわけではありませんが、製品に品質問題が発生した場合は対応の指揮をとるため機械設計に関する知識が必要です。
評価担当者
製品や試作品が設計の意図した通りに機能するかを評価します。性能テスト、耐久テスト、安全テストなどを実施します。
評価のみを行う専門部署や特殊な評価や規格認証を受けるための評価を行う専門会社なども存在します。設計部や技術部の若手が勉強を兼ねて評価を行うことも多々あります。
基礎研究者
基礎研究者は、新しい原理や技術の探求を行い、長期的なイノベーションを目指します。
コンサルタント
コンサルタントは、特定の専門知識を活かして、企業が直面する技術的課題を解決するためのアドバイスを提供します。
機械設計の働き方について検討する
企業の規模は大きいほうがいいのか
大企業では、一般的にリソースが豊富であり、大規模プロジェクトや国際的な取引に携わる機会が多いです。これにより、設計者はさまざまな技術や産業を跨いで幅広い経験を積むことができます。また、教育プログラムやキャリア開発の機会も充実していることが多く、設計者は自己成長を促進できる環境にあります。ただし、企業が大きいと個々の貢献が見過ごされがちになることもあります。一方、中小企業では、設計者が直接的な影響を及ぼし、プロジェクト全体を見渡せる可能性があります。
大企業で働くメリット
一般的に企業規模に比例して「収入が高くなります」下記は企業規模毎の平均年収になります(賃金構造基本統計調査より)
また、「最新の設備やシステムが使える」ことも大企業の利点です。試作のための3Dプリンターや評価のための装置が自由に使える環境は設計者にとって非常に魅力的です。
さらに、「大企業には人材が豊富」です。機械設計分野に限らずわからないことがあったときに詳しい人に直接経験を聞けるので効率的に業務を進めたり、自身の成長につなげたりが可能です。
そして、大企業で働くメリットとして「サプライヤや商社とのやりとりが楽」という点もあります。私自身も大企業と呼ばれる会社から転職しましたが、思っていた以上に大企業の信用を背景に業務をしていたのだと感じました。(物不足や物流混乱が続く近年ではさらにそれが顕著に現れています。)
大企業で働くデメリット
設計者として大企業で働く際のデメリットは「設計業務をしない」という点です。
効率化のため設計業務自体は派遣設計者や受託設計会社に依頼するケースが多くなります。
その結果として、設計管理はできるが設計自体はできない社員になってしまうケースが少なくありません。設計管理ができること自体は良いのですが、設計管理自体は管理作業であり、ある程度の訓練を積めば誰でもできてしまいます。
設計管理以外の得意分野も成長していれば問題ありませんが暇なわけでは無いのでなかなか他分野の成長機会はありません。簡単にいうと、特定の大企業に適した汎用型になってしまい市場価値のない設計者になってしまう点がデメリットです。
マネージャーとプレーヤーはどっちが良い?
機械設計の領域におけるマネージャーとプレーヤー(直接設計作業を行う技術者)の違いは、その役割と責任において顕著です。どちらが自分に向いているか考えてください。
マネージャーはプロジェクトのスケジュール管理、チームのリーダーシップ、予算調整などの管理業務を主導します。彼らはチームの成果に責任を持ち、意思決定者として機能します。
一方、プレーヤーは実際の設計作業を担当し、革新的な解決策を考案し、技術的な問題を解決することに焦点を当てています。プレーヤーはその専門知識を生かし、具体的な成果物の創出に注力することが求められます。
また、自身の組織でプレーヤー(またはマネージャー)で居続けることが可能かどうかも大切です。一般的にプレーヤーの方が給与は少ないことや、マネージャーに役職定年があることも配慮しどんなキャリアを歩むか考える必要があります。
機械設計で副業は可能か?
現代では、機械設計においても副業が可能な環境がそろってきています。機械設計の知識を活用した副業としては次のようなことが始めやすいでしょう。
フリーランスへの検討
フリーランスの設計者は、直接的な契約を通じて専門スキルを市場に提供します。フリーランスには不安定な収入や自己管理の必要性といった課題があります。成功するためには、営業活動、クライアントとの関係構築、そして事業の持続可能性を保つための戦略が不可欠です。
フリーランスとして機械設計に携わることを考える場合、市場ニーズの把握と個人のスキルセットの強化が重要です。(必要なスキルについて検討する方はこちらの記事も参考になるかと思います)
最後に
本日は、機械設計者が行う業務や機械設計者のいろいろな働き方の種類について紹介しました。機械設計者にも多様な業務と働き方があることがご理解いただけたとおもいます。ご精読ありがとうございました。
本ブログでは、あなたが機械設計者として活躍するため記事を用意しています。機械設計の学習指針についての記事や機械設計の将来性についての記事、おすすめの転職エージェントについての記事等がありますのでご参考にしてください。
コメント