技術士第二次試験の口頭試験では、筆記答案について「なぜそう書いたのか」「ほかの方策はないか」「修正するとしたらどこか」と問われることがあります。
この記事では、再現答案を作った後に何を整理し、質問へどう答えるかを、結論・記述意図・不足点・改善案の4段階で解説します。題材は機械部門の架空例ですが、準備手順は他部門でも使えます。
この記事で準備するもの
- 筆記直後に作った再現答案
- 各設問で自分が置いた前提条件
- 採用した方策と、採用しなかった方策
- 説明が不足した箇所と、現在考える改善案
- 各論点を30秒で説明する回答メモ

まだ再現答案を作っていない場合は、先に筆記後の振り返りと口頭準備ノートをご覧ください。
口頭試験では筆記答案も材料になる
技術士第二次試験実施大綱では、口頭試験は筆記試験の答案と業務経歴を踏まえて実施すると示されています。試験中に自分の答案や資料を参照することはできません。
すべての文章を暗記し直す必要はありません。重要なのは、答案の各部分について次の4点を自分の言葉で説明できることです。
- どのような前提で問題を捉えたか
- なぜその課題や方策を選んだか
- どの効果とリスクを想定したか
- 今読み直すと、何を補足または修正するか
答案の正当性を守り切る場ではありません。記述時の判断を説明し、足りなかった点を認めたうえで、より妥当な考えを示します。
再現答案を4列の点検表にする
文章を最初から読み直すだけでは、弱点を見落とします。設問ごとに、答案を次の表へ分解してください。
| 答案に書いたこと | 選んだ理由 | 不足・曖昧な点 | 現在の改善案 |
|---|---|---|---|
| 課題、方策、効果、リスク | 前提条件、評価軸、優先順位 | 根拠不足、用語の曖昧さ、設問漏れ | 補足する条件、代替案、評価方法 |
答案に書かなかった知識を大量に追加するより、書いた内容の因果関係を先に確認します。たとえば「人材不足を課題とした」なら、なぜ設備老朽化やサプライチェーンより優先したのかを説明できるようにします。
筆記答案に関する質問は4種類に分ける
| 質問の種類 | 質問例 | 準備する内容 |
|---|---|---|
| 記述意図 | なぜこの課題を最重要と考えましたか | 前提、影響、優先順位 |
| 根拠 | その方策に効果がある根拠は何ですか | 原理、実績、評価指標 |
| 代替案 | ほかにどのような方策がありますか | 比較した選択肢、採用条件 |
| 補足・修正 | 今なら答案のどこを修正しますか | 不足点、修正内容、答案全体への影響 |
この4種類に整理すると、想定質問を際限なく増やさずに済みます。答案の主要論点ごとに4種類の問いを当てれば、準備の抜けが見つかります。
回答は「結論・意図・不足・改善」で組み立てる
修正を求められたときは、次の順序で30秒から45秒程度にまとめます。
| 順序 | 話す内容 | 言い出し例 |
|---|---|---|
| 1.結論 | 修正するか、維持するか | 修正すべき点は、評価指標の具体性です |
| 2.記述意図 | 当時そのように書いた理由 | 答案では停止損失の低減を重視しました |
| 3.不足点 | 何が伝わらなかったか | 一方、誤報率と見逃し率を書けていません |
| 4.改善案 | 何をどこへ加えるか | 効果指標に両方を加え、運用後の更新条件も示します |
不足を認めるだけで終わらず、修正後の答えを短く提示します。逆に、問題文の条件から記述を維持する場合も、理由と適用条件を説明します。
架空例|リモートモニタリングの答案を振り返る
ここでは、機械設備へリモートモニタリングを導入する架空の答案を使います。問題の解き方は機械設計・選択科目Ⅱ-2の解答例で詳しく扱っています。
答案の要旨:量産ラインの高速主軸を対象とし、振動加速度を最重要計測項目に選んだ。特徴量と傾向値を遠隔監視し、異常時だけ原波形を保存する。
質問1|なぜ振動加速度を最重要としたのですか
最重要とした理由は、軸受損傷の早期検出と、複数の機械的異常への適用性です。温度は潤滑不良や焼付きの把握に有効ですが、明確な温度上昇より前に損傷固有の振動成分が現れる場合があります。そこで振動を主指標とし、温度とモータ電流を補助指標にして誤報を抑える構成としました。
結論の後に比較対象を出し、選択理由を説明しています。「一般的だから」ではなく、検出したい損傷と計測原理を結び付けます。
質問2|ほかに考えられる方法はありますか
代替案として、潤滑油中の摩耗粉監視と定期的なオフライン振動診断があります。摩耗粉監視は損傷の裏付けになりますが、対象設備では既存配管の改造が必要です。オフライン診断は導入しやすい一方、点検間隔の間に進む異常を見逃す可能性があります。連続監視が必要な主軸には振動を選び、定期点検時の分解所見で判定を検証します。
代替案の名前だけでなく、適用条件と採用しなかった理由まで示します。
質問3|今ならどこを修正しますか
修正すべき点は、異常判定後の行動と評価指標です。答案では二段階の警報に触れましたが、注意時の追加測定、危険時の停止判断、責任者への連絡を具体化できていませんでした。さらに検出率だけでなく、誤報率、見逃し率、警報から点検までの時間を評価指標に加え、運用データでしきい値を更新する条件も記述します。
答案全体を否定せず、足りない箇所を特定して、修正内容を述べています。
答案を覚えていないときの答え方
時間がたつと、表現や記述順序を完全には思い出せないことがあります。覚えていない内容を推測で断定すると、別の箇所と矛盾します。
回答例:正確な表現までは記憶していませんが、〇〇を最重要課題とし、△△を方策として記述しました。現在考えると、適用条件として□□を補足する必要があります。
記憶の範囲を明らかにしてから、技術的な考えを答えます。分からないことを取り繕わず、質問の意味が曖昧なら確認してから回答してください。
避けたい5つの答え方
- 答案は正しいと言い切る
条件や不足を検討せず、説明が止まります。 - 全部書き直したいと答える
どこが問題かを特定できていません。 - 新しい用語を大量に追加する
元の答案との関係が分かりにくくなります。 - 採用しなかった案を否定する
条件が変われば有効になる可能性まで考えます。 - 記憶にない内容を断定する
筆記答案や別の回答との矛盾につながります。
45分で作る口頭準備メモ
| 時間 | 作業 |
|---|---|
| 10分 | 設問ごとに、答案へ書いた結論と前提を抜き出す |
| 10分 | 選んだ理由と比較した選択肢を書く |
| 10分 | 設問漏れ、根拠不足、曖昧な用語を探す |
| 10分 | 4種類の質問に対する30秒回答を作る |
| 5分 | 録音し、結論が最初に来ているか確認する |
全文原稿を作ると、言葉を忘れた瞬間に止まりやすくなります。「結論」「理由」「不足」「改善」の見出しとキーワードだけを見て話す練習へ移行してください。
最終チェックリスト
- 設問ごとの結論と前提条件を説明できる
- 課題や方策を選んだ評価軸が言える
- 採用しなかった案と、適用できる条件が言える
- 効果を確認する指標と残るリスクが言える
- 答案の不足箇所を具体的に特定している
- 修正後の内容を30秒程度で示せる
- 記憶にない部分を推測で断定しない
- 専門外の試験官にも分かる言葉へ直している
まとめ
筆記答案の質問に備えるときは、暗記よりも判断の再現を優先します。答案を「書いたこと・選んだ理由・不足点・改善案」に分け、質問には結論から答えてください。
業務経歴の説明も同時に準備する場合は、業務説明を1分・2分・3分で組み立てる方法へ進みましょう。口頭試験全体の確認は口頭試験の概要と対策にまとめています。
