本連載記事では、約6カ月の勉強期間で、技術士2次試験(筆記)に合格するためにやるべきことをまとめています。

第2ステップ~第4ステップでは、過去問分析から練習テーマの優先順位を決めます。本日は、第4ステップ「問題予想」です。ここでいう問題予想は、出題を的中させることではありません。過去問と公的資料を手掛かりに、限られた時間で何から練習するかを決めるための仮説です。第2・第3ステップで集めた材料を使い、最初に取り組むテーマを決めましょう。
問題予想の流れ
問題予想は次の順で進めていきます。
- 選択Ⅱ-1用に3テーマ選択
- 選択Ⅱ-2用に3テーマ選択
- 必須Ⅰと選択Ⅲ用に3テーマ選択
テーマ数は正解ではありません。本記事の「各3テーマ」は、学習を始めるためのモデルです。まず優先テーマで骨子を作り、過去問を解いて不足を確認し、経験・残り期間に応じて追加または入れ替えます。
| 判断すること | 確認する内容 |
|---|---|
| 優先テーマを仮決め | 過去問での頻度、設問形式、自分の得意・不足を照合する |
| 骨子を作る | 設問の要求、使う専門知識、条件・リスクを短く並べる |
| 過去問で確認 | 実際の設問に答えられるかを試し、不足知識を洗い出す |
| 追加・入れ替え | 準備の偏りと残り期間を見て、次のテーマを決める |
選択Ⅱ-1用に3テーマ選択
まずは、選択科目のⅡ-1の問題の選定から行います。
テーマ選定
本記事では、選択Ⅱ-1の着手例として、まず3テーマを仮選定します。
選択Ⅱ-1は具体的な専門知識を問うため、少数のテーマ予想だけで範囲を覆うことはできません。まず過去3年分を通して設問の要求を確認し、苦手な問題や頻出分野は実際に解きます。3テーマは入口として使い、過去問演習の結果に応じて範囲を広げてください。
基本的には第2ステップ「過去問題分析」でまとめたリストを見ながら検討します。ポイントは次の2つです
- <Ⅱ-1の出題頻度の多いテーマ>を選択する。
- <Ⅱ-2やⅢの問題のなかでⅡ-1の形にできそうなテーマ>がないか調べる。

「過去問題分析」での分析結果は次のような内容でした。
- 選択Ⅱ-1は、力学や加工法の問題が頻出。また、機械要素(軸受け等)、品質や設計の手法(FMEA等)、材料についての問題も多い。さらに、3Dプリンターや構造最適化、CAEの問題は近年のトレンドとなっていそう。
以下は、R7年度までの過去問題と2025年版ものづくり白書を参照した、機械部門(選択科目:機械設計)の検討例です。この例では、次の3テーマから着手することにしました。
- DX (シミュレーションや最適化に関わる問題。また、PLMやデジタルツインなども考えられる)
- 力学 (脆性や疲労などシミュレーションで予測しづらい領域が狙われている気がする)
- 機械要素 (定期的に出題があるが近年出題がない。しかし、機械設計において最重要なのでそろそろ出題されるか)
このように根拠を記録して、最初に練習するテーマを仮決めします。予想の的中ではなく、選んだ理由を説明でき、演習結果に応じて見直せることが重要です。
問題化
次に選択したテーマについて具体的に問題の形にします。たとえば、先に選定したテーマ「力学」については次のような過去問題がありました。
R7年Ⅱ-1-2
高サイクル荷重を受ける金属製の機械構造部材の疲労強度設計手順について 述べよ。
出典:公益社団法人日本技術士会
CAEなどのシミュレーションで注意が必要な領域が狙われていると考えると、まだ出題されていない「衝撃」や「潤滑」などがあり得そうです。これを問題の形にすると
衝撃荷重を受ける金属製の機械構造部材の強度設計手順について安全係数の考え方を踏まえて述べよ。
等となります。このように、過去問を参考にテーマごとに問題の形にしてください。
選択Ⅱ-2用に3テーマ選択
選択科目のⅡ-2の問題選定に進みましょう。
テーマ選定
「過去問題分析」での分析結果は次のような内容でした。
- 選択Ⅱ-2については、シミュレーション(最適化)や原因調査といったテーマが中心。必須Ⅰや選択Ⅲで出題されていたテーマ(「カーボンニュートラル」など)が出題される傾向も。
以下は、R7年度までの過去問題と2025年版ものづくり白書を参照した機械設計の検討例です。この例では、次の3テーマを優先しました。
- DX:シミュレーションや最適化 (頻出テーマなので外せない)
- 原因調査 (頻出テーマなので外せない)
- DX × 経済安全保障 (直近の選択Ⅲで出題されており白書の最重要内容)
問題化
次に選択したテーマについて具体的に問題の形にします。たとえば、先に選定したテーマ「DX × 経済安全保障」については過去問題を参考に下記のように問題化できます。
現代社会は、ヒトやモノが地球規模で緊密な連携を保ちながら発展を遂げている。何らかの理由で連携が分断されると、機能回復まで多大な時間を要する可能性がある。機械設計の技術者には社会に製品を供給し続けるレジリエントな設計活動が求められる。あなたが製品開発 設計責任者に選ばれた場合を想定して、下記の内容について記述せよ。
(1)開発製品を具体的に1つ示し、どのようにレジリエントな設計を実施するかを明確にして、調査・検討すべき事項とその内容について説明せよ。
(2)レジリエントな設計を進める手順について、留意すべき点、工夫を要する点を含めて述べよ。
(3)デザインレビュー (DR)に加え、業務を効率的、効果的に進めるための関係者との調整方策について述べよ。
このように、過去問を参考にテーマごとに問題の形にしてください。
必須Ⅰと選択Ⅲ用に3テーマ選択
必須Ⅰと選択科目Ⅲのテーマ選択に進みます。
テーマ選定
本記事で扱う機械部門・機械設計の例では、必須Ⅰと選択Ⅲで関連するテーマを共有できる場合があります。ただし、設問の要求と求められる解答の深さは異なるため、それぞれの問題として骨子を確認します。
「過去問題分析」での分析結果は次のような内容でした。
- 必須Ⅰでは機械固有とDXが多い
- 選択ⅢではDXについてのテーマが主流
以下も、R7年度までの過去問題と2025年版ものづくり白書を使った機械設計の分析例です。機械固有の問題も含めて見直す前提で、この時点では次のテーマを優先しました。
- DX (出題頻度とものづくり白書の分析から最重要)
- 経済安全保障 (出題頻度とものづくり白書の分析から最重要、競争力向上とレジリエンス強化)
- 環境 (ものづくり白書の分析から最重要)
この分析例では白書の主要テーマと重なりました。ただし、白書との共通性は学習テーマを選ぶ材料の一つであり、出題を保証するものではありません。
問題化
テーマ「DX 」について具体的に問題の形にしましょう。「資料分析」での考察から「多品種少量生産市場にロボットを導入する際の課題」というDXテーマのキーワードが挙がっているのでこれを具体的に問題化します。
我が国では、少子高齢化により労働者人口の減少に歯止めが掛からず、あらゆる産業において人手不足が懸念されている。特にこれまでロボットが導入されていない少量多品種市場にロボットの導入を進めることが重要である。
(1) あなたは機械設計の技術者として、まず、少量多品種市場にロボットの導入を具体的に想定して説明せよ。次に、導入における多角的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、その課題の内容を示せ。
(2) 前問で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ、これを最も重要とした理由を述べよ。また、その課題に対する複数の解決策を設計者の立場から示せ。
(3) 前問で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクとそれへの対策について、専門技術を踏まえた考えを示せ。
【必須Ⅰ専用】(4) 前問(1) ~ (3)の業務遂行に当たり、技術者としての倫理、社会の持続可能性の 観点から必要となる要件・留意点を題意に即して述べよ。
このように、過去問を参考にテーマごとに問題の形にしてください。
過去問は、設問形式・要求事項・基本知識を確認するうえで重要です。一方、過去問の文章をそのまま覚えるだけでは、対象や条件を変えた問題に対応しにくくなります。過去問を解いた後に、対象・条件・立場を変えた練習問題も作ってみましょう。
たとえば、選択Ⅱ-1の問題に機械要素である軸受けをテーマにした問題は定期的に出題されていますがいずれも観点の違う問題となっています。
R3年
回転する軸を支える機械要素として、すべり軸受の特徴と使用上の留意点を 転がり軸受と対比して説明せよ。
H30年
回転軸の支持機構に転がり軸受を用いた場合に,軸受寿命に影響を与える要因を2つ挙げ、設計において留意すべき点について説明せよ。
H28年
回転軸を支持する機械要素には大きく分けて、流体膜による滑り軸受と転動体を用いた転がり軸受がある。この2つの長所と短所を説明し、機械設計における使い分け方法を述べよ。
基本は、過去問で要求と基礎を確認し、その後に自作問題で応用する順番です。時間が限られる場合は、まず公式の過去問を優先してください。
参考)テーマ選定の結果
下図は、R7年度までの過去問題と2025年版ものづくり白書を参照した、機械部門(選択科目:機械設計)の選定例です。現在の学習では、日本技術士会の過去問題ページで最新年度を確認し、必要に応じてテーマを更新してください。

最後に|照準が定まったので安心して進めよう
本日は、問題予想について解説しました。
技術士試験論文の最初の壁は「範囲の広さ」です。より正確には「範囲がとてつもなく広いように感じてしまう」ことです。結果として何から手を付けたらいいか分からず、対策準備が完了しないままで試験当日を迎えてしまう方も多いのではないかと思います。
今回のステップ「問題予想」で、対策準備のゴールが設定できました。今回選定したテーマ/問題に対して対策をすれば良いのです。照準が定まりました、安心して次のステップ「論文作成(選択Ⅱ)」を進めましょう。
