技術士試験に合格するにはコンピテンシーについて理解しておく必要があります。なぜなら、技術士試験の採点は、「コンピテンシー」を基準に行われます。
一般的にコンピテンシーといえば「資質や能力」のことを指します。例えば、知力や体力、コミュニケーション能力などのことです。結果を出す人には何らかの「重要なコンピテンシー」を持っているはずなのでそれを基準に評価しようという考え方です。
技術士とはつまるところ「結果を出す技術者」のことです、結果を出す技術者として必要なコンピテンシーを技術士試験で評価しています。
技術士のコンピテンシーとは、①専門的学識、②問題解決能力、③マネジメント、④評価、⑤コミュニケーション、⑥リーダーシップ、⑦技術者倫理、⑧継続研鑽の8つのことをさします。(日本技術士会)
本日は、この8つのコンピテンシーについてできるだけ簡単に解説いたします。
技術士に求められる8つのコンピテンシー
専門的学識
技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用する。
法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用する。
技術士会資料より
専門的学識とは、専門知識を理解し、応用することです。
重要なのは応用できるかどうかです。専門知識を知っているだけでなく、それを業務で活用できることを求められます。つまり、これまでの業務で培った知識をほかの仕事で活用できるかです。
2次試験の筆記試験では、これまで培った専門知識を活かして、論文テーマの中で解決策を提案することで専門的学識をアピールする応用力が求められます。
問題解決
業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析する。
複合的な問題に関して、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善する。
技術士会資料より
問題解決とは、「複雑な問題を整理」し、「多様な視点で調査」し、「複数の解決策を提案」できることです。
2次試験の筆記試験では、必須(論文)Ⅰと選択(論文)Ⅲの設問が「課題の抽出」「最重要課題の選定」「解決策提案」になっているので、各設問に答えることがコンピテンシーのアピールになります。
マネジメント
業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
技術士会資料より
技術士試験においてのマネジメントとは、「資源の配分」です。業務を実行するための金・人・時間・設備・情報などの資源には限りがあります。その限られた資源を、目標を達成するために適切に配分できるか、工夫して資源を削減できるかを評価されます。
「ドラッカーのマネジメント」等と混同しないように注意してください。
評価
業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
技術士会資料より
評価とは、業務を反省して次へ活かせるかということです。
2次試験の筆記試験では、必須(論文)Ⅰと選択(論文)Ⅲの設問4で問われます。解決策を実施した結果としてどんな成果や波及効果、懸念点やリスクがあるかを評価する能力が問われます。
口頭試験では「これまでの業務で、良かった点と悪かった点を教えてください。」「これまでの業務から反省点を活かして、改善に繋げた事例はありますか?」という質疑応答によって評価されます。
コミュニケーション
業務履行上、口頭や文書等の方法を通じて、多様な関係者との間で、明確かつ効果的な意思疎通を行うこと。
技術士会資料より
コミュニケーションとは、関係者と上手くコミュニケーションがとれるかということです。「口頭」だけでなく「文書等」と書かれているので筆記試験の文章が論理的に書かれていて分かりやすいかどうかも評価対象です。
また、口頭試験では「これまでの業務経験の中で、関係者とどのようにコミュニケーションをとってきましたか?」という質疑や口頭試験中の態度から評価されます。
リーダーシップ
業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
技術士会資料より
技術士試験においてのリーダーシップとは、「明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめる」ということです。
つまり、「現場での問題に関係者と協力しながら粘り強く取り組み結果を出す」能力が求められます。
2次試験の選択(論文)Ⅱの設問3で「関係者との調整方策」を問われます。具体的なプランやどんな仕組みを用意するかの解答が求められます。技術士においてのリーダーシップはカリスマ性などではありません。
技術者倫理
公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
技術士会資料より
技術士者倫理とは、技術士として持つべき倫理観をさし、「技術士倫理綱領」としてまとめられています。また関連して理解したいのが「技術士の3義務2責務」です。
こちらの記事でまとめていますのでご一読お願い致します。
2次試験の筆記試験において必須(論文)Ⅰと口頭試験で問われます。
自己研鑽
業務履行上必要な知見を深め,技術を修得し資質向上を図るように,十分な継続研さん(CPD) を行うこと。
技術士会資料より
自己研鑽とは、技術者としての実力向上のために勉強していますかということです。
2次試験の口頭試験において、「資質向上のために何をしているか」が問われます。学会誌の購読や学会発表を行ったなどの技術者としての実力を高めるためにどのような取り組みをしたかを解答します。
技術士二次試験とコンピテンシーの対応
技術士試験二次試験は、受験者が技術士に求められるコンピテンシーを持っているかを評価しています。どの問題でどのコンピテンシーを評価するかは決まっているので、理解してアピールする必要があります。
筆記試験 必須Ⅰ | 筆記試験 選択Ⅱ-1 | 筆記試験 選択Ⅱ-2 | 筆記試験 選択Ⅲ | 口頭試験 | |
専門的学識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
問題解決 | 〇 | 〇 | |||
マネジメント | 〇 | 〇 | |||
評価 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
コミュニケーション | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
リーダーシップ | 〇 | 〇 | |||
技術者倫理 | 〇 | 〇 | |||
自己研鑽 | 〇 |
最後に
本日は、技術士に求められるコンピテンシーについて解説しました。
結論としては、技術士試験においてコンピテンシーを理解することは重要で、コンピテンシーに沿った論文や質疑応答をすることで合格がぐっと近づきます。今回の記事があなたの学習の役に立てば幸いです。
本ブログでは、技術士を目指すためのロードマップ記事を用意していますのでご確認いただければと思います。また、技術士を目指すかには、有料講座を利用する方法も効果的です。こちらの記事でおすすめの有料講座を比較紹介しているのでご参考にしてください。
ご精読ありがとうございました。