技術士試験における「技術者倫理」とは次の内容を指します。
公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代に渡る社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
文部科学省技術士分科会
本日は、この「技術者倫理」について解説します。
「技術者倫理」は試験で問われるから重要
技術士2次試験は「技術士に求められるコンピテンシー」をチェックする試験です。コンピテンシーのひとつに「技術者倫理」があります。
技術士試験では、2次試験筆記の必須(論文)Ⅰと口頭試験の質疑応答で問われます。ここで「技術者倫理」に則った解答を行う必要があります。
「技術者倫理」は「技術士倫理綱領」を読めばわかる
冒頭の一文は多くを詰め込みすぎてわかりずらい所がありますが、「技術士倫理綱領」という資料に詳しくまとめられているのでそちらを確認します。特に難しくないので読んでいただければ理解できると思います。
「技術士倫理要綱」公益社団法人 日本技術士会より
【前文】
技術士は、科学技術の利用が社会や環境に重大な影響を与えることを十分に認識し、業務の履行を通して安全で持続可能な社会の実現など、公益の確保に貢献する。
技術士は、広く信頼を得てその使命を全うするため、本倫理綱領を遵守し、品位の向上と技術の研鑚に努め、多角的・国際的な視点に立ちつつ、公正・誠実を旨として自律的に行動する。
【本文】
(安全・健康・福利の優先)
1.技術士は、公衆の安全、健康及び福利を最優先する。
(1)技術士は、業務において、公衆の安全、健康及び福利を守ることを最優先に対処する。
(2)技術士は、業務の履行が公衆の安全、健康や福利を損なう可能性がある場合には、適切にリスクを評価し、履行の妥当性を客観的に検証する。
(3)技術士は、業務の履行により公衆の安全、健康や福利が損なわれると判断した場合には、関係者に代替案を提案し、適切な解決を図る。
(持続可能な社会の実現)
2.技術士は、地球環境の保全等、将来世代にわたって持続可能な社会の実現に貢献する。
(1)技術士は、持続可能な社会の実現に向けて解決すべき環境・経済・社会の諸課題に積極的に取り組む。
(2)技術士は、業務の履行が環境・経済・社会に与える負の影響を可能な限り低減する。
(信用の保持)
3.技術士は、品位の向上、信用の保持に努め、専門職にふさわしく行動する。
(1)技術士は、技術士全体の信用や名誉を傷つけることのないよう、自覚して行動する。
(2)技術士は、業務において、欺瞞的、恣意的な行為をしない。
(3)技術士は、利害関係者との間で契約に基づく報酬以外の利益を授受しない。
(有能性の重視)
4.技術士は、自分や協業者の力量が及ぶ範囲で確信の持てる業務に携わる。
(1)技術士は、その名称を表示するときは、登録を受けた技術部門を明示する。
(2)技術士は、いかなる業務でも、事前に必要な調査、学習、研究を行う。
(3)技術士は、業務の履行に必要な場合、適切な力量を有する他の技術士や専門家の助力・協業を求める。
(真実性の確保)
5.技術士は、報告、説明又は発表を、客観的で事実に基づいた情報を用いて行う。
(1)技術士は、雇用者又は依頼者に対して、業務の実施内容・結果を的確に説明する。
(2)技術士は、論文、報告書、発表等で成果を報告する際に、捏造・改ざん・盗用や誇張した表現等をしない。
(3)技術士は、技術的な問題の議論に際し、専門的な見識の範囲で適切に意見を表明する。
(公正かつ誠実な履行)
6.技術士は、公正な分析と判断に基づき、託された業務を誠実に履行する。
(1)技術士は、履行している業務の目的、実施計画、進捗、想定される結果等について、適宜説明するとともに応分の責任をもつ。
(2)技術士は、業務の履行に当たり、法令はもとより、契約事項、組織内規則を遵守する。
(3)技術士は、業務の履行において予想される利益相反の事態については、回避に努めるとともに、関係者にその情報を開示、説明する。
(秘密情報の保護)
7.技術士は、業務上知り得た秘密情報を適切に管理し、定められた範囲でのみ使用する。
(1)技術士は、業務上知り得た秘密情報を、漏洩や改ざん等が生じないよう、適切に管理する。
(2)技術士は、これらの秘密情報を法令及び契約に定められた範囲でのみ使用し、正当な理由なく開示又は転用しない。
(法令等の遵守)
8.技術士は、業務に関わる国・地域の法令等を遵守し、文化を尊重する。
(1)技術士は、業務に関わる国・地域の法令や各種基準・規格、及び国際条約や議定書、国際規格等を遵守する。
(2)技術士は、業務に関わる国・地域の社会慣行、生活様式、宗教等の文化を尊重する。
(相互の尊重)
9.技術士は、業務上の関係者と相互に信頼し、相手の立場を尊重して協力する。
(1)技術士は、共に働く者の安全、健康及び人権を守り、多様性を尊重する。
(2)技術士は、公正かつ自由な競争の維持に努める。
(3)技術士は、他の技術士又は技術者の名誉を傷つけ、業務上の権利を侵害したり、業務を妨げたりしない。
(継続研鑽と人材育成)
10.技術士は、専門分野の力量及び技術と社会が接する領域の知識を常に高めるとともに、人材育成に努める。
(1)技術士は、常に新しい情報に接し、専門分野に係る知識、及び資質能力を向上させる。
(2)技術士は、専門分野以外の領域に対する理解を深め、専門分野の拡張、視野の拡大を図る。
(3)技術士は、社会に貢献する技術者の育成に努める。
「技術者倫理」は「3義務2責務」とまとめて覚える
口頭試験では、「技術者倫理」と「技術士法の3義務2責務」とまとめて質疑されます。倫理と技術士法の関連しているのでまとめて覚えると効率的です。(ちなみに、口頭試験についての記事はこちらです)
「技術者倫理」と「技術士法の3義務2責務」の関連性を色分けした図
最後に
本日は、技術士のコンピテンシーのひとつ「技術者倫理」ついて解説しました。技術士二次試験では筆記試験の必須(論文)Ⅰと口頭試験において評価されることになります。
内容自体は難しくないと思いますが、本記事を参考に効率的に覚えていただければと思います。
本ブログでは技術士試験の合格のための記事を用意してます。合格のためにやるべきことをまとめたロードマップ記事も用意していますのでご確認いただければと思います。
また、技術士を目指す方には、有料講座を利用する方法も効果的です。こちらの記事でおすすめの有料講座を比較紹介しているのでご参考にしてください。
ご精読ありがとうございました。