技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)は、第二次試験の筆記試験・口頭試験で評価される重要な観点です。単に用語を暗記するのではなく、それぞれを答案や業務経歴にどう表すかまで理解しておく必要があります。
正式な8項目は、専門的学識、問題解決、マネジメント、評価、コミュニケーション、リーダーシップ、技術者倫理、継続研さんです。文部科学省の科学技術・学術審議会 技術士分科会が、技術士であれば最低限備えるべき資質能力として定めています。
2026年度(令和8年度)の第二次試験から、2023年1月25日改訂版のコンピテンシーが適用されています。ただし、日本技術士会は、筆記試験・口頭試験の試験内容自体に変更はないと案内しています。
この記事では、8項目の公式定義をやさしく言い換え、総合技術監理部門を除く第二次試験で、どの科目・場面に対応するかを整理します。
8項目は、4つの視点に分けると理解しやすくなります。
知識を使って問題を捉え、限られた資源で実行し、関係者と協働しながら結果を評価する。その全体を、倫理と継続的な研さんが支えると考えてください。
知識と分析
専門的学識・問題解決
専門知識を使い、複合的な問題の要因と制約を整理して、合理的な解決策を示す視点です。
実行と振り返り
マネジメント・評価
人員・設備・金銭・情報などを配分し、結果と波及効果を確かめて次の改善へつなげる視点です。
関係者との協働
コミュニケーション・リーダーシップ
多様な関係者と意思疎通し、利害を調整して、業務を前へ進める視点です。
技術士としての姿勢
技術者倫理・継続研さん
公衆の安全・健康・福利を優先し、変化する技術と仕事に適応できるよう能力を高め続ける視点です。
試験対策では、用語の暗記で終わらせません。筆記では答案のどこに表すか、業務経験の整理では自分がどう判断・行動したか、口頭では具体例を短く説明できるかまで確認します。
技術士に求められる8つのコンピテンシー
| コンピテンシー | 簡単な意味 |
|---|---|
| 専門的学識 | 専門知識を理解し、業務へ応用する |
| 問題解決 | 複合的な問題を分析し、合理的な解決策を示す |
| マネジメント | 要求事項を満たすよう資源を配分する |
| 評価 | 結果・成果・波及効果を確かめ、改善につなげる |
| コミュニケーション | 多様な関係者と明確に意思疎通し、協働する |
| リーダーシップ | 関係者の利害を調整し、取りまとめる |
| 技術者倫理 | 公衆の安全・健康・福利を最優先に行動する |
| 継続研さん | CPDを通じて能力を維持・向上する |
専門的学識
技術士が専門とする技術分野 (技術部門)の業務に必要な、技術部門全般にわたる専門知識及び選択科目に関する専門知識を理解し応用すること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
技術士の業務に必要な、我が国固有の法令等の制度及び社会・自然条件等に関する専門知識を理解し応用すること。
重要なのは、知識を覚えているだけでなく、実際の業務課題に応用できることです。筆記試験でも、専門知識を論文テーマの分析や解決策の提案に結び付ける力が求められます。
問題解決
業務遂行上直面する複合的な問題に対して、これらの内容を明確にし、必要に応じてデータ・情報技術を活用して定義し、調査し、これらの背景に潜在する問題発生要因や制約要因を抽出し分析すること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
複合的な問題に関して、多角的な視点を考慮し、ステークホルダーの意見を取り入れながら、相反する要求事項(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)、それらによって及ぼされる影響の重要度を考慮した上で、複数の選択肢を提起し、これらを踏まえた解決策を合理的に提案し、又は改善すること。
問題解決とは、複合的な問題の内容を明確にし、背景にある要因や制約を分析した上で、複数の選択肢から合理的な解決策を提案・改善することです。
第二次試験では、必須科目Ⅰと選択科目Ⅲの評価項目に「問題解決」が含まれます。課題の抽出、重要度を踏まえた選定、解決策の提案を、根拠がつながる形で書くことが大切です。「問題」と「課題」の使い分けは、技術士論文における問題・課題・解決策の整理で具体例を確認できます。
マネジメント
業務の計画・実行・検証・是正(変更)等の過程において、品質、コスト、納期及び生産性とリスク対応に関する要求事項、又は成果物(製品、システム、施設、プロジェクト、サービス等)に係る要求事項の特性(必要性、機能性、技術的実現性、安全性、経済性等)を満たすことを目的として、人員・設備・金銭・情報等の資源を配分すること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
技術士試験におけるマネジメントの中心は「資源の配分」です。品質・コスト・納期・生産性、リスク対応や成果物の要求事項を満たすために、人員・設備・金銭・情報などを適切に配分する力が問われます。単に資源を削減することを意味するものではありません。
評価
業務遂行上の各段階における結果、最終的に得られる成果やその波及効果を評価し、次段階や別の業務の改善に資すること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
評価とは、業務の各段階の結果、最終的な成果や波及効果を確かめ、次の段階や別の業務の改善につなげることです。筆記試験では必須科目Ⅰと選択科目Ⅲで「評価」も評価項目に含まれます。解決策の効果、波及効果、懸念事項などを根拠とともに整理しましょう。
口頭試験では「マネジメント・評価」が30点の試問事項です。業務の結果をどのように評価し、次の改善へつなげたかを、業務経歴に沿って簡潔に説明できるようにしておきます。説明時間ごとの組み立て方は、業務経歴を1分・2分・3分で説明する方法にまとめています。
コミュニケーション
業務履行上,情報技術を活用し,口頭や文書等の方法を通じて,雇用者,上司や同僚,クライアントやユーザー等多様な関係者との間で,明確かつ包摂的な意思疎通を図り,協働すること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
海外における業務に携わる際は,一定の語学力による業務上必要な意思疎通に加え,現地の社会的文化的多様性を理解し関係者との間で可能な限り協調すること。
コミュニケーションは、口頭や文書、情報技術を使い、多様な関係者と明確かつ包摂的に意思疎通し、協働する力です。筆記試験では、読み手が誤解しない論理的な記述も重要です。口頭試験では、業務で関係者とどう情報共有し、合意形成したかを、自分の経験に沿って説明できるようにします。
リーダーシップ
業務遂行にあたり、明確なデザインと現場感覚を持ち、多様な関係者の利害等を調整し取りまとめることに努めること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
海外における業務に携わる際は、多様な価値観や能力を有する現地関係者とともに、プロジェクト等の事業や業務の遂行に努めること。
技術士試験におけるリーダーシップは、カリスマ性や役職の高さを意味しません。現場感覚を持ち、多様な関係者の利害を調整して、業務を取りまとめる力です。
選択科目Ⅱ-2では、リーダーシップも評価項目に含まれます。関係者の利害をどのように調整し、業務を進めるかという視点で答えることが重要です。
技術者倫理
業務遂行にあたり,公衆の安全,健康及び福利を最優先に考慮した上で,社会,経済及び環境に対する影響を予見し,地球環境の保全等,次世代にわたる社会の持続可能な成果の達成を目指し,技術士としての使命,社会的地位及び職責を自覚し,倫理的に行動すること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
業務履行上,関係法令等の制度が求めている事項を遵守し,文化的価値を尊重すること。
業務履行上行う決定に際して,自らの業務及び責任の範囲を明確にし,これらの責任を負うこと。
技術者倫理とは、技術士として持つべき倫理観をさし、「技術士倫理綱領」としてまとめられています。また関連して理解したいのが「技術士の3義務2責務」です。
第二次試験では、必須科目Ⅰと口頭試験で技術者倫理が評価対象です。法令遵守だけでなく、公衆の安全・健康・福利を最優先にし、社会・経済・環境への影響と持続可能性を考えて判断する姿勢が求められます。
継続研さん
CPD活動を行い,コンピテンシーを維持・向上させ,新しい技術とともに絶えず変化し続ける仕事の性質に適応する能力を高めること。
文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」より
継続研さんとは、CPD活動を通してコンピテンシーを維持・向上し、新しい技術や変化し続ける仕事に適応する能力を高めることです。口頭試験では「技術士としての取組姿勢」の一つとして評価され、配点は20点です。日頃の学習、学協会活動、講習、発表、業務を通じた能力向上について、目的と得た成果を説明できるようにしておきましょう。
技術士第二次試験とコンピテンシーの対応
第二次試験では、筆記試験と口頭試験を通してコンピテンシーが評価されます。科目ごとの主な評価項目を把握し、問いに必要な観点を過不足なく盛り込みましょう。
※以下は、総合技術監理部門を除く20技術部門の整理です。〇は主な評価項目を示します。総合技術監理部門の必須科目は、試験内容と口頭試験の評価区分が異なります。スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
| 評価項目 | 必須Ⅰ | 選択Ⅱ-1 | 選択Ⅱ-2 | 選択Ⅲ | 口頭 |
|---|---|---|---|---|---|
| 専門的学識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
| 問題解決 | 〇 | 〇 | |||
| マネジメント | 〇 | 〇 | |||
| 評価 | 〇 | 〇 | 〇 | ||
| コミュニケーション | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
| リーダーシップ | 〇 | 〇 | |||
| 技術者倫理 | 〇 | 〇 | |||
| 継続研さん | 〇 |
口頭試験の4評価区分と配点
口頭試験では、8項目のうち6項目を次の4区分で評価します。30点は各コンピテンシーではなく、二つを組み合わせた区分全体の配点です。各区分で60%以上を得る必要があります。
| 評価区分 | 配点 |
|---|---|
| マネジメント・評価 | 30点 |
| コミュニケーション・リーダーシップ | 30点 |
| 技術者倫理 | 20点 |
| 継続研さん | 20点 |
筆記試験の作り方は、必須科目Ⅰの骨子と答案と選択科目Ⅱ・Ⅲの骨子と答案で科目別に確認できます。口頭試験へ進む方は、評価項目・配点・準備手順も合わせて確認してください。
まとめ:8項目を答案と業務経験につなげる
技術士に求められるコンピテンシーは、専門知識だけでなく、問題を分析して解決策を示す力、資源配分、成果の評価、関係者との協働、倫理、継続的な能力向上まで含む8項目です。
2023年の改訂では、問題解決におけるデータ・情報技術の活用、多角的な視点、ステークホルダーの意見、コミュニケーションにおける情報技術・包摂性・協働、技術者倫理における文化的価値や持続可能な成果などが追加・明確化されました。また、「継続研さん」が8つ目の項目として明確に位置付けられています。改訂版は2026年度の第二次試験から適用されていますが、試験内容自体は変更されていません。
- 全体の受験ルートを確認する:技術士になるまでの合格ロードマップ
- 筆記試験を順序立てて進める:第二次筆記試験12ステップ
- 口頭試験の評価と準備を確認する:口頭試験の流れと対策
独学で不足する支援が明確になった場合は、技術士講座の料金・添削・口頭試験対策を比較すると、必要のないサービスを避けやすくなります。
出典:文部科学省「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」、日本技術士会「令和8年度技術士第二次試験 受験申込み案内」、日本技術士会「コンピテンシーに関する質問」
