本連載記事では、約6カ月の勉強期間で、技術士2次試験(筆記)に合格するためにやるべきことをまとめています。

本日は、第7ステップ「論文作成(必須Ⅰ)」について解説いたします。第4ステップで決めた予想問題の一つを例にして論文を作成します。目標は合格レベルの論文を1つ完成させることです。
注)本連載では、2次試験の中の論文対策のみについて触れています。「試験申込書の作成方法」や「口頭試験対策」、「試験対策講座の比較」についても別記事で解説していますのでよろしければご参考にしてください。
必須Ⅰの論文作成例
先に選定したテーマの中から「DX」にかかわる問題を解答してみます。とくに、3「資料分析」でも触れた「少量多品種市場へのロボット導入」というものづくり白書であげられていた課題に対しての解答を目指してみましょう。
問題
オリジナル問題
近年、産業界において人手不足が顕著となり、多くの企業が労働力の確保に苦慮している。この問題に対処するためには、効率的な作業プロセスの確立、先進技術の積極的な採用、及び知識.技能の高度化が不可欠となる。特に、自動化技術、ロボット技術、Alの応用などが期待されている。大規模需要がある領域ではロボットの導入が進んでいるが、特にこれまでロボットが導入されていない少量多品種市場にロボットの導入を進めることが重要となってきている。これを蹄まえ、以下の設問に答えよ。
(1)あなたの専門分野である機械設計において、技術者としての立場で多面的な観点から「少量多品種市場にロボットの導入を進めること」に関する課題を多様な視点から抽出し分析せよ。
(2)分析し抽出した課題の中から、あなたが最も重要であると考える課題を①つ挙げ、解決するための技術的提案を複数述べよ。
(3)あなたの技術的提案がもたらす効果を具体的に示すとともに、その提案を実施する際のリスクを挙げよ。また、リスクが大きい場合はその低減策について専門技術を含めて述べよ。
(4) 業務遂行において必要な要件を技術者としての倫理、社会全体の持続可能性の観点から述べよ。
骨子表作成
準備した骨子表は下記になります。

下図は、骨子を作る過程での検討フローです。

実際に論文に書くのは「技術課題の設定」以降ですが、どのような検討に基づいて課題が設定されたのかを明確にしておくべきです。問題によっては「ゴールの設定」や「技術的な目標設定」あたりまでは問題文中で語られていたります。フローを参考に骨子を作っていけるようにしましょう。
解答例
骨子に基づいて書いた解答論文は下記になります。

参考)解答テンプレート
参考にできる解答論文パターンのテンプレートを紹介します。



大切なのは内容です。体裁はテンプレート(パターン化)を利用して効率よく論文を書けるようにしましょう。また、全体の分量のバランスも気を付けたいですね。(筆者は、下記のタイトル部分を先に解答用紙に書いてしまってできるだけ「穴埋め問題」の感覚で論文を作っていくようにしています。このやり方の方がなんとなくですが論文作成のハードルがさがるのでお勧めです。)

対応するコンピテンシーの確認
必須Ⅰで評価されるコンピテンシーは、「専門的学識」、「問題解決」、「評価」、「コミュニケーション」、「技術者倫理」です。
専門的学識は、部門の学識です。専門的すぎると多角的な視点が不足しているとみなされますので気を付けましょう。ですが、浅すぎる内容を書くくらいなら専門的になってしまう方がいいでしょう。このあたりのバランスは実際の問題と部門/選択(専門)次第ですので一般的な正解はありません。
技術者倫理は、必須Ⅰでのみ評価される項目です。よく決まりきった文言をコピペしている人がいますが、論文の内容や問題のテーマにあっていないとダメです。
合格レベル論文を作成するヒント
最後に、一度書いた論文を合格レベルにするためのヒントを2つ紹介します。
添削はどうしても必要
技術士試験の合格レベルの明確な基準は公開されていません。このため、書いた論文が合格レベルなのかどうかの判定には困ってしまうでしょう。
結果として、判断基準になるのは主に次の二つです。
- 過去に合格した論文を分析する
- 技術士(合格経験者)に添削してもらう
合格した論文の分析については2「過去問題分析」の中でお話ししたので、「添削」について説明します。添削とは、第三者に論文を見てもらいチェックしてもらうことです。添削の際の留意点は
- 複数の方に見てもらうこと
- できれば指導のプロの添削を受けること
技術士試験の採点基準は不明瞭であり、毎年の難易度や要求されるレベルが変化します。したがって、毎年の試験動向を研究し続けている企業が提供する添削サービスを利用することが非常に重要です。何年か前に1度合格しただけの技術士が提供する個人添削サービスでは、試験の最新傾向に追いついていない可能性があり、合格レベルが変化していることを見落としてしまうことがあります。
個人が提供するサービスや、先輩技術士からのアドバイスは、多様な視点の一つとして参考にはなるものの、添削のメインとして依存するのは避けたほうがよいでしょう。これらの意見はあくまで補完的なものと考え、最新の傾向をしっかり把握している指導のプロの添削を中心に据えるのが効果的です。
とくに、合格レベルの論文を一度完成させるまではできるだけ指導のプロによる添削を受けることをおすすめします。
(指導のプロの添削が受けられる有料講座のおすすめはこちらで紹介しているのでご参考になりましたら幸いです)
チャットGPTでヒント得る方法を覚える

論文作成で行き詰ったら、生成AIを使ってみるのも一つの手です。解答は自分の経験や知識の中から書く方が具体性や説得力があり良いと思いますが、思いつかない場合はAIにヒントをもらいましょう。
筆者がよく使う取っ掛かりとなるpromptを参考に置いておきます。
必須Ⅰ用
あなたは、〇〇部門(専門:○○)の技術士です。下記の問題について次の手順でいっしょに考えて
#手順
①まず、具体的なテーマを検討する
②現状と目指すべき姿のGAPである問題点を抽出する
③問題点を分析し機械部門(機械設計)の技術者としての課題を3つ設定する。
④課題の中で最も重要なものを選択、その理由も書く
⑤最も重要な課題についての解決策を機械設計の手法やツールで検討し3つ以上考える
⑥解決策を実施した結果、最重要課題がどうなったかを評価する
⑦解決策を実施した結果、目指すべき姿にたいしてどうなったかを評価する
⑧解決策を実施したうえで生じるリスク(起きるかわからないマイナスの可能性)がないか評価する。⑨リスクの対策を機械設計領域の方法で検討する
⑩解決策を実施するにおいて必要な要件を技術者としての倫理の観点から2つ挙げる
⑪策を実施するにおいて必要な要件を社会全体の持続可能性の観点から2つ挙げる
#問題
(問題文を張り付ける)
一発で良い回答は出ないので「○○の視点でもっと専門的に考えて」や「○○について深堀して」等と会話して引き出してみましょう。また、参考資料や写真を読み込ませて資料を参考に回答を生成すると良い感じに言語化してくれることもありましたので挑戦してみてください。但し、基本的にそのまま論文に使えるような回答が出力されることはほとんどありません。それでも、見落としていた観点や解決のアイデアは十分期待できます。
最後に|必須Ⅰと選択Ⅲとの違いについて
本日は、論文作成(必須Ⅰ)について解説しました。最後に、よく聞かれる「必須Ⅰと選択Ⅲの違い」について少し説明してみます。結論は実際の問題と部門/選択(専門)次第ですので一般的な正解はありません。ですが、イメージでいうと下の図のようになるでしょう。

必須Ⅰは、社会問題に対する技術者としての解答で、選択Ⅲは技術の問題に対する技術者としての解答です。なので、解答の深さがちがうということです。とはいっても、部門と選択の明確な線引きなんてできないので必須Ⅰの解決策の中に選択(専門)の深さの内容を書いて合格になっている例も見たことがあります。あくまでイメージくらいで捉えておけば問題ないのではないのでしょうか。
次はいよいよ「第3段階|骨子練習と解答ネタ」。ここからが本番ですので一緒にがんばりましょう。